
働く自分の身に降りかかる日常を、どこか哀愁のにじむタッチで描き続けている青木ぼんろさん(@aobonro)。通勤、仕事、人間関係──誰の人生にも大きな影響は与えないかもしれないが、確実に心に引っかかる“あの瞬間”を切り取った漫画が、多くの共感を集めている。ウォーカープラスでは、青木さんのサラリーマン生活を「恐らく誰の人生にも影響を及ぼすことはない僕のサラリーマン生活」と題し、全編描き下ろしで連載中だ。今回は、その中から通勤ラッシュの満員電車で起きた、ちょっとした事件を描いたエピソードを紹介しよう。
■「もうもたねーぞ!」逃げ場のない車内で響いた、限界の叫び



舞台は、いつも通りの通勤ラッシュ。身動きが取れないほど人で埋め尽くされた車内で、突然「車掌!早くドア閉めろ!もうもたねーぞ!」という叫び声が響き渡る。あまりにも切迫したその声に、周囲の空気は一気に張り詰めた。まるでゾンビ映画で生存者が追い詰められた場面のような緊迫感が、ぎゅうぎゅう詰めの電車内に広がっていく。
通勤電車では、基本的に誰もが無言だ。走行音だけが支配する空間だからこそ、ひとつの声が異様なほど大きく感じられる。青木さん自身、毎日満員電車で通勤しており、特に雨の日などは人の密度がさらに増すことで、心の余裕が削られていく感覚を覚えるという。普段は気にも留めない些細なことが、限界状態では一気に感情を刺激してしまうのだ。
■誰にでも起こり得る!? 日常の中に紛れ込む、映画のような一瞬
電車内という閉ざされた空間では、ちょっとした異変がドラマになる。静まり返った車内で叫ぶサラリーマンの姿は、滑稽にも見えるが、同時に胸が詰まるほど切実でもある。誰もが「自分も、いつか同じ状況になるかもしれない」と感じてしまうからだ。
青木さんは、こうした出来事を特別な事件として描くのではなく、「よくある朝のひとコマ」として淡々と、しかし確かな温度をもって描いていく。そこにあるのは大事件ではなく、名もなきサラリーマンの限界と、それを目撃してしまった周囲の戸惑いだ。笑っていいのか、心配すべきなのか、その判断すら揺らぐ瞬間が、リアルに切り取られている。
■誰の人生にも影響しないけれど、確かに存在している日常の一コマたち
満員電車は、社会人にとって切っても切れない存在だ。今日もどこかの車両で、声にならない悲鳴や、思わず漏れた叫びが生まれているかもしれない。青木さんの描くサラリーマン生活は、そんな一瞬一瞬をすくい上げ、「たいしたことはないけれど、忘れられない出来事」として読者に手渡してくれる。
あなたが明日乗る電車にも、ゾンビ映画さながらの訴えをするサラリーマンがいるかもしれない。そのとき、少しだけ周囲を見渡してみてほしい。そこには、誰の人生にも影響を及ぼさないけれど、確かに生きている人たちのドラマが詰まっている。
取材協力:青木ぼんろ
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