“人情系”と“スタイリッシュ系”、食をテーマにした人気ドラマ2作品を放送

“人情系”と“スタイリッシュ系”、食をテーマにした人気ドラマ2作品を放送

「深夜食堂 4」
「深夜食堂 4」 / (C)2016安倍夜郎・小学館/「深夜食堂 -Tokyo Stories-」製作委員会

「食」をテーマにしたドラマが、日本のエンターテインメントの中で一大ジャンルとして地位を確立して久しい。かつては味の優劣や料理人の対決に重きが置かれることもあったが、いま視聴者が求めているのは「居場所」としての作品ではないだろうか。劇的な展開や派手な演出を削ぎ落とし、ニッチで静かな世界観を淡々と描く。そこには、現代人が日常で擦り減らした神経を鎮める不思議な効能が隠されている。Jテレで1月3日(土)、4日(日)に放送される「深夜食堂 4」「名建築で昼食を スペシャル 横浜編」を軸に、「食ドラマ」人気のコアを紐解いていく。

■「深夜食堂 4」 
 路地裏の聖域が肯定する、夜の住人たちの“過去”と“今”

まず取り上げたいのは、小林薫が“マスター”を演じる「深夜食堂 4」。新宿・花園界隈の路地裏にある「めしや」は深夜0時から営業を開始することから、通称「深夜食堂」と呼ばれている。店には多くの訳あり客が訪れ、好き好きに料理を注文。それでもマスターは材料さえあれば、注文に応じてくれる。オムニバス形式の物語には大きな波風こそないものの、ゆったりと心を通わせる穏やかな時間が魅力の作品だ。

同作は安倍夜郎による同名漫画を原作にしたタイトル。ドラマはシリーズ化され、2015年には映画化されるなど長く愛されることに。さらにその人気は国内に留まらず中国版、韓国版のドラマも制作された。同ドラマがなぜこれほどまでに世界中の視聴者を魅了するのか。その最大の要因は、小林薫演じるマスターが醸し出す徹底した「受け身の美学」にある。

深夜0時から朝の7時までしか営業しない「めしや」に集うのはヤクザ、ストリッパー、売れない歌手など訳アリの人々だ。だが「めしや」のなかでは世間のしがらみを離れ、誰の目も気にせずゆったり過ごせる。マスターの静かな眼差しが、それを許す。

主演の小林はかつてのインタビューにおいて、「マスターはあくまでも傍観者」と自身の役柄を表現している。客の身の上話に対して決して深入りせず、しかし拒絶もしない「適度な距離感」がマスターの味なのだ。

マスターは客に名言で説教したり、諭したりすることはしない。ただ彼らの話を黙って聞き、彼らが欲する料理を材料の限りに提供するのみ。タコさんウインナー、“昨日の”カレー、猫まんま…素朴だけど普通の店では出てこない料理たちは客たちの過去や悩みと直結しており、ひと口食べることで彼らは活力を取り戻していく。

たとえばシーズン4の第4話「オムライス」では親の借金を返済するために日本で頑張るユナ(コ・アソン)と、ちょっと抜けた物理学者の雨宮(岡田義徳)の物語が描かれる。そのなかでユナは、雨宮のためにマスターからオムライスの作り方を習いたいと申し出る。マスターはそれを了承して彼女の背中をそっと押すのだが、のちに訪れる2人の決断には一切触れない。国籍も肩書も関係なくフラットに相手と向き合い、受け入れ、それでいて踏み込み過ぎない。その関係性の希少さ、ありがたさは現代人にとって貴重な存在だ。

視聴者は「めしや」が持つ「何を抱えていても否定されない」という絶対的な安心感に、現実社会で摩耗した心を預けることができる。ここではなんでもない日常も、心の奥にしまっていた悲劇も酒の肴として洗い流す。

大爆笑でもスリリングなアクションでもなく、共感と寛容の空間。現代人が欲する1つの理想郷のかたちが「めしや」なのかもしれない。

■「名建築で昼食を スペシャル 横浜編」
 建築とランチが織りなす、昼下がりの“知的な逃避行”
「名建築で昼食を スペシャル 横浜編」
「名建築で昼食を スペシャル 横浜編」 / (C)「名建築で昼食を スペシャル」製作委員会


カフェ開業を夢見る春野藤(池田エライザ)と、ノスタルジックでかわいらしい「乙女建築」を巡るのが趣味の建築模型士・植草千明(田口トモロヲ)の2人が同作語の主役。「乙女建築」の写真をSNSにアップする千明を女性と思い込んで弟子入りを志願した藤だったが、やがて千明の独特な感性に惹かれてフラットな関係性を築いていく。

同ドラマは名建築を巡り、そこでランチを食べるという“だけ”の構成だ。夢を追う若き藤の悩みは尽きないものの、恋愛要素や仕事上の深刻なトラブルといったノイズは本筋に介入してはこない。名建築を巡るなかではシームレスにアドリブシーンに繋がり、キャスト陣の素のリアクションが覗くほどだ。

原案「歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ」の著者であり、ドラマの監修も務めた文筆家・甲斐みのりの視点が色濃く反映された同ドラマ。切り取り方に表れているのが、「建築物を単なる“建物”ではなく、作り手の愛や、長い時間を経て蓄積された物語の器」と捉えている部分だ。たとえば今回放送の「横浜編」で開業から90年を超えるホテルニューグランドを訪れた際は、洋の東西をミックスした建築デザインと“復興”の意志を背負った来歴を堪能。そのうえで同ホテルでいただく料理にも初代料理長、二代目総料理長に縁のあるメニューをチョイスするなど、名建築に詰まった歴史を味わい尽くした。

視聴者は彼らの視点を通じて、普段何気なく通り過ぎていた街並みの中に隠された美しさに気づかされる。美しく緻密に計算された建築物と美味しい食事。大きな事件は起きなくとも、感性を静かに刺激される構成は見事のひと言だ。

犬には吠えられるし、警察官に会えば必ず職務質問されるが独特の感性を持つ千明。そしてさまざまなことに迷いつつも、シリーズを重ねるごとに人間的な成長を見せる藤。美しい建築と2人のゆるやかな交流は心のささくれを癒し、“行動を起こさせる”刺激もくれる。

なにかと忙しく、他人の目を気にしがちな現代。「名建築で昼食を」は心のバランスを整える趣味を提案してくれる、知的な逃避行を演出するドラマなのだ。
「名建築で昼食を スペシャル 横浜編」
「名建築で昼食を スペシャル 横浜編」 / (C)「名建築で昼食を スペシャル」製作委員会


■ストレスフリーな視聴体験が導く、現代的な「凪」の境地

2つの作品に共通するのは、「他者の領域を侵犯しない」というマナーと「それぞれの人生をただ肯定する」という温かさだ。

両作品ともに、登場人物たちが劇的な成長や変化を強いられることもない。マスターは相変わらず店に立ち続け、植草と藤の建築巡りも淡々と続く。視聴者は彼らが明日も明後日も変わらずそこにいてくれるという「変わらなさ」に安堵する。次々と新しい刺激が消費されていく時代において、変わらない場所、変わらない味、変わらない関係性…それ自体が稀有なエンターテインメントと言えるだろう。

なおJ:COMが提供する大人のための上質なエンタテインメントチャンネル「Jテレ」では、両作品を年明けにオンエア。1月3日(土)、1月4日(日)夜8時からは「深夜食堂 4」を一挙放送(3日は#1、#3~#6の放送、4日は#7~#10の放送)、1月3日(土)夜11時ほかからは「名建築で昼食を スペシャル 横浜編」が放送される。

「深夜食堂 4」は不破万作、綾田俊樹、光石研、松重豊、オダギリジョーらおなじみのキャストに加え、映画版でゲスト出演した多部未華子と余貴美子が新たに常連客として登場。「名建築で昼食を スペシャル 横浜編」では千明が通う喫茶店のマスターとして三上寛が、さらに千明の過去を知る宇野依子役の加藤登紀子が物語を盛り上げる。横浜の名建築といえば外せない建築家・前川國男が手掛けた神奈川県立図書館と音楽堂、そして藤の“ある提案”からホテルニューグランドを巡っていく。

変わらない幸せ、一歩踏み出してみることで見えてくる感動、何気ない小さなやり取りが生む心温かさ。忙しく疲弊した心にこそ必要な「心の栄養」を得るためにも、「食ドラマ」のなかに流れる穏やかな時間を大切に味わいたいものだ。
「名建築で昼食を スペシャル 横浜編」
「名建築で昼食を スペシャル 横浜編」 / (C)「名建築で昼食を スペシャル」製作委員会

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