●予言騒動に寄与したインターネットとSNS
ノストラダムスの大予言と今回の予言騒動を、メディア環境の観点からみたとき、大きく異なるのはインターネットとソーシャルメディアの存在です。
ノストラダムスの大予言の時期にインターネットはまだあまり普及しておらず(日本でのインターネット商用利用開始は1993年)、雑誌やテレビといった媒体が予言を拡散する主軸を担いました。
他方で、今回の予言騒動には、香港の有名な風水師インフルエンサーの存在があり、現地ではソーシャルメディアを通じてこの予言が広まっていたと言われています。
いまでは陰謀論も雑誌やテレビのオカルト番組だけではなく、ソーシャルメディア上で広がります。『となりの陰謀論』の著者である烏谷昌幸・慶應大教授は、最近の論稿でソーシャルメディアによる「陰謀論の日常化」を指摘しています(「陰謀論とSNS」三田評論ONLINE(2025年10月7日))。
●あなたの「注目」が金になる。アテンション・エコノミーの罠
インターネットの普及は、情報の発信に対する参入障壁を大きく軽減し、新規参入者を劇的に増加させました。そのうえ、ソーシャルメディア上では、アテンション・エコノミーと呼ばれる経済原理が強く働きます。
多くのソーシャルメディアは広告収益によって支えられており、私たちユーザーの「アテンション(注目)」をいかに惹きつけるかが鍵となるため、各事業者ともそれを奪い合うゼロサムゲームを繰り広げています。
ソーシャルメディアが、いいね!やシェアボタンを押すといったユーザーの行動や反応をフィードバックし、アルゴリズムがユーザーに最適化したコンテンツを届ける仕組みになっているのは、少しでもユーザーをプラットフォームに「粘着」させる必要があるからです。
そして、新奇性のある情報や驚愕的な情報、さらに感情を刺激する情報等は、ユーザーの反応を引き出しやすく、上記のような仕組みと相性が良いため、より拡散しやすいと言われています。そうして拡散していくものの中に、陰謀論が混じっている場合があるのです。
さらに、残念ながら広告収益を目当てに陰謀論を積極的に流布している人もおり、現在のメディア環境はそうした人々に経済的なインセンティブを与えてしまっています。陰謀論等をはじめとする不確かな言説にとって、まさに住み心地のよい環境が広がっていると言えるでしょう。

