帰る場所があるという救い
数日悩んだ末、私は実家に電話をかけた。受話器の向こうで、母の声を聞いた瞬間、堪えていたものが一気に溢れ出す。
夫が万引きを犯していたこと。帰宅後の夫の態度に「もう一緒にはいられない」と悟ってしまったこと。でも子どもたちとの将来に不安があって決断しかねていること。
事情を一通り話し終えると、少しの沈黙の後、母は静かに言った。
「……大変だったね」
それだけで、胸がいっぱいになる。
「真緒、無理しなくていいんだよ。いつでも、帰ってきていい」
母が電話を代わり、父も続けて言った。
「子どもたちのことも含めて、俺たちも支える。ひとりで抱え込むな」
電話を切ったあと、私はしばらく動けなかった。涙が止まらなかった。
わたしには帰る場所がある。受け止めてくれる人がいる。その事実が、心に重く、そして温かく響いた。
私は深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。迷いは、まだ完全には消えない。それでも、進む方向は見えた。
私は、子どもたちを守る。そのために、自分の人生も守る。
そう心に決めた夜、私の表情は、これまでより少しだけ強くなっていた気がした―――。
あとがき:守ると決めたもの
第4話は、感情的な決裂ではなく、現実と向き合う静かな決意が描かれます。子どもたちの存在、医療費、生活の不安──離婚は簡単な選択ではないでしょう。それでも、支えてくれる実家の言葉によって、真緒は「一人ではない」と知ることができました。
母として子どもを守ることと、自分の人生を守ることは、決して相反することではありません。この夜の決意が、次に訪れる行動への確かな一歩となっていきます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

