友人やお世話になった人に財産を残したいときは?
財産を「身元保証等高齢者サポート事業」に寄付する以外にも、「自分の財産を友人やお世話になった人に残したい」「保護猫・保護犬のボランティア団体に寄付したい」「養護施設の子どもたちに残したい」「わずかとはいえ国に引き渡すことは避けたい」と思う方もいるでしょう。
財産を残して亡くなった人に配偶者や血族などの「法定相続人」がおらず、遺言書もないと、多くの場合、そのお金は国が引き取ることになります。
特定の人や団体に渡したい場合は、法的効力を持つ「遺言書」を作る必要があります。
遺言書には大きくいうと「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。自筆証書遺言は自分で手書きで作成しなくてはなりません。作った日付の記入や署名捺印をするなどのルールが守られていないと、無効になることもあるので気をつけてください。
自筆証書遺言は自宅に保管しておくこともできますが、「自筆証書遺言書保管制度」を利用して、法務局に預けておくことができます。自筆証書遺言書保管制度を利用すると、亡くなったときに、あらかじめ指定しておいた人(最大3名)に、遺言書が法務局に保管されていることが通知され、遺言書の紛失や発見されないという事態を防げます。
公正証書遺言は、公証役場で作成される遺言書です。作成には費用がかかりますが(財産の価額が100万円以下で5000円の手数料)、遺言書は公証役場に保管される点で安心といえます。
財産の額がそれなりに大きく、財産を確実に特定の人に残したい場合は、公正証書遺言のほうがいいかもしれません。
ただ公正証書遺言は、作成後に必ず「遺言執行者」を決めておく必要があります。遺言執行者は、遺言書に書かれている内容を実際に行う人のことです。公正証書遺言を作った人が亡くなった場合、凍結された銀行口座からお金を引き出し、遺言書に書かれている人に渡す役割を担います。
ただし、この役割は手続きなどが煩雑でもありますから、遺言執行者には弁護士などを指名するほうがいいでしょう。

「死んだあとのことは、どうでもいい」では済まされない
日本総研では、2020年に「中高年者の意思決定の準備状態に関する調査」を行いました。
この調査のなかで、死後対応について「意見A/死んだ後にできるだけ人に迷惑をかけないよう準備したい」「意見B/死んだ後のことはどうしようもない。誰かがどうにかしてくれる」という2つの意見を示し、どちらの考え方に近いかを尋ねています。
全体としては、「意見Aにまったく賛成だ」「どちらかというと意見Aに賛成だ」という人、つまり「遺族などの負担を軽減するために自分で準備をしておきたい人」が8割を超えました。
なかでも、配偶者と死別した人では、その意見が9割近くにのぼっています。
自分が配偶者の死後事務を経験してみて、「本人が準備していないと、残された人が大変だ」と感じたり、あるいは「準備をしてくれていたので助かった」ということを身をもって体験したことが、このような考え方に至っている背景にあるのかもしれません。
独居・同居の別で見ると、独居の人も同居の人も、遺族の負担を軽減するために自分で準備をしておきたい人が約8割であるという点は同じですが、独居の人のなかには「意見Bにまったく賛成だ」「どちらかというと意見Bに賛成だ」という、「死んだあとのことは誰かがどうにかしてくれる」派の人が8・8%おり、同居世帯の人よりもその割合が高くなっています。
ひとり暮らしの高齢者のなかには、「身寄りがない以上、死後のことは考えても仕方がない」と諦めている人もいるのかもしれません。
しかし、「自分が死んだあとのことはどうでもいい」というのは甘い考えともいえます。

「老後ひとり難民」で「あとのことはどうでもいい」と、何の対処もしていない人は、生前に周囲から「リスクがある人」と見なされてしまうことになるからです。
たとえば先に触れたように、「老後ひとり難民」の場合、入院する際に病院から敬遠されがちです。
もちろん、病院には「応召義務」があり、診察治療の求めがあった場合に、正当な事由がなければ拒んではならないとされています。
しかし現場の人が「この人は緊急連絡先がわからないから、何かあったときに対応に困る」と考えれば、病床が逼迫するなか、無理に受け入れようとはしないかもしれません。
一方、いざというときに「緊急連絡先になってくれる知人がいます」「身元保証サービスを契約しています」などといえる人であれば、「それならなんとか対応できるかもしれない」と判断されて受け入れてもらえる可能性が高まるでしょう。
では、「迷惑をかけないような準備」とは何でしょうか。
次章以降は、「身元保証等高齢者サポート事業者」の実態や国の動きなどを確認しながら、「老後ひとり難民」が安心して暮らしていくための方法を一緒に考えていきましょう。

