●自筆証書遺言の保管制度とその限界
自筆証書遺言のデメリットである「紛失」「改ざん」「形式不備」のリスクを軽減するため、2020年7月から「自筆証書遺言書保管制度」が始まっています(法務局における遺言書の保管等に関する法律)。
この制度を利用すれば、作成した遺言書を法務局で保管してもらえるため、紛失や隠匿の心配がなくなります。また、遺言者が亡くなった後に必要となる家庭裁判所での「検認」手続きも不要になるというメリットがあります(同法11条)。
ただし、この制度には限界もあります。法務局の窓口では、日付の有無や署名押印といった「外形的な確認」は行われますが、遺言の内容面のついての「実質的な審査」までは行われません(「法務局における遺言書の保管等に関する政令」参照)。
保管制度を利用したからといって、内容の矛盾や遺言能力の問題による無効リスクが完全に解消されるわけではない点には注意が必要です。
●確実性を求めるなら「公正証書遺言」という選択肢も
より確実な方法としては、「公正証書遺言」を作成するという選択肢があります。
これは、証人2人以上の立ち会いのもと、遺言者が公証人に遺言の趣旨を口授し、公証人がそれを筆記して作成する形式です(民法969条)。法律の専門家である公証人が作成に関与するため、形式不備で無効になるリスクは極めて低く、原本が公証役場に保管されるため、紛失や偽造の心配もありません。
費用や手間はかかりますが、財産関係が複雑な場合や、将来的に親族間で遺言能力や内容を巡る争いが予想される場合、あるいは絶対に無効にしたくないという強い希望がある場合には、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言を選択するのが賢明です。自身の状況や目的に合わせ、弁護士等の専門家に相談しながら適切な方式を選ぶことが一般的です。

(参考文献)
「第3版 Q&A 遺言・信託・任意後見の実務 公正証書作成から税金,遺言執行,遺産分割まで」(雨宮 則夫、寺尾 洋/2018年8月、日本加除出版)
「事例解説 高齢者からの終活相談に応えるための基礎知識」(相原佳子/青林書院、2018年10月)
「ユーリカ民法5 親族・相続〔第2版〕」(田井義信、小川富之/法律文化社、2025年4月)
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)
※2026年1月4日14時 文頭の誤記を一カ所訂正しました。

