
就活に50連敗した女子大生・聴村りすんは、社会から完全に弾き出されたような気分でいた。「もう何をやってもダメだ」。そんな自暴自棄の末に彼女が思いついたのが、ホームセンターで買った資材とハロウィン用のコスプレ衣装で作る“懺悔室”だった。懺悔は1回1万円。「人に言えないことを聞くだけ」。あまりにも軽く、ふざけきった発想だったはずが、なぜか人は集まり始める。
■なんちゃってシスターの懺悔室は1回1万円!? それでも「話したい人」は現れた



「神父でも牧師でもない、ただの大学生なんですけど」。なんちゃってシスター姿でそう前置きしながらも、りすんは懺悔人の言葉を黙って聞き続ける。最初に現れた男の懺悔は、あまりにも重かった。「妻と、ずっと一緒にいたかった」。その願いを叶えるために彼が選んだ行動は、到底“懺悔”という言葉では収まらない。
続く回では、推し作家を守るためにSNSのアンチを“一掃”したというファンも現れ、「それ、もう犯罪では?」と思わず背筋が冷える告白が次々と飛び出す。「これ、聞くだけで本当にいいの?」と、りすん自身も戸惑いながら、それでも懺悔室から逃げ出すことはしない。
■目指したのは「人間のテーマパーク」!? 本物じゃないからこそ描けた、懺悔室という地獄
本作『黒懺悔』が生まれた背景について、漫画家・洋介犬さん(@yohsuken)は「ショートオムニバス形式のホラーを考えていて、以前からやりたかった“懺悔室ホラー”に挑戦した」と語る。映画『エクソシスト3』に登場する懺悔室のシーンから大きな影響を受けたというが、あえて“本物”にしなかった理由も明確だ。「本物の懺悔室だと制約が多すぎる。だから全部ニセモノにして、何でもありにした」。
懺悔1回1万円という金額設定も、「現実にギリギリ払う人がいそうなライン」を狙ったものだという。ホラー一色にせず、泣ける話や温度のあるエピソードを混ぜることで、狭い懺悔室を“人間のテーマパーク”にしたかったと振り返る。
■ホラーだけでは終わらない! 時には温かく、人の業や救いを描く
連載の中でも異色なのが、第8話「少愛ノ罪」だ。なんちゃってシスターがホームレスと病気の猫を救うこの回は、残酷さよりも温かさが前に出る。
「全部が殺戮じゃなくていい」。そう語る洋介犬さんが特に気に入っているのは、我が子に「お前は人間ではない」と言い続けた男の話だとか。「結末も含めて、人の業を描き切れた感覚があった」と感じているという。
『黒懺悔』は一話完結型だが、制作ではまず“ヤバい人”“困っている人”という人物像を作り、「この人なら何を懺悔するか?」と肉付けしていくスタイルを取った。その結果、二段落ちのような構成が生まれ、「正解だった」と手応えを語る。
■描きたいのは人間の「ダークサイド」と「ライトサイド」
洋介犬は2025年2月18日に『黒懺悔』を刊行したほか、同じくサイコホラー作品『LaLaLa…』も発売している。さらに春から夏にかけて新連載が3本控えており、「人間のダークサイドとライトサイドを、これでもかというほど描くつもり」と意気込む。なんちゃってシスターの懺悔室から覗く人間の闇は、まだまだ底が見えそうにない。
取材協力:洋介犬(@yohsuken)
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