お酒を飲むと気分が楽になる理由をご存じですか? 脳の抑制機能とリラックス効果を医師が解説

お酒を飲むと気分が楽になる理由をご存じですか? 脳の抑制機能とリラックス効果を医師が解説

アルコールは気分や感情、思考といった精神面にも強く作用します。少量の飲酒による一時的なリラックス効果は多くの方が経験していますが、その背後では脳の抑制機能が低下しています。習慣的な飲酒により心理的依存が形成されると、感情の調整をアルコールに頼るパターンが定着してしまいます。さらに長期的には、不安や抑うつ症状を悪化させる可能性も指摘されており、心の健康への影響を軽視できません。

小坂 真琴

監修医師:
小坂 真琴(医師)

2022年、東京大学医学部卒業
2022年4月~2024年3月、今村総合病院(鹿児島県鹿児島市)で初期研修を修了
2024年4月よりオレンジホームケアクリニック(福井県福井市) 非常勤医師として在宅診療を行いながら、福島県立医科大学放射線健康管理学講座大学院生として研究に従事
2025年10月よりナビタスクリニックに勤務
週1度、相馬中央病院 (福島県相馬市) 非常勤医師として内科外来を担当

気分と感情に対する精神的作用

アルコールは身体だけでなく、気分・感情・思考といった“心の領域”にも強く影響します。少量であればリラックス効果や気分の高揚が得られることもありますが、飲み方が習慣化したり量が増えたりすると、精神面でのバランスが大きく崩れやすくなります。ここではアルコールが心にどのような変化をもたらすのか、短期的なものから長期的なものまで順番に見ていきます。

抑制の解除と一時的な高揚感

アルコールを飲むと、「気分が明るくなる」「普段より話しやすくなる」という変化を感じる人が多くいます。これは、アルコールが脳の中でも大脳皮質と呼ばれる理性的な判断を司る部分の働きを弱めるためです。この部分のブレーキが緩むことで、緊張がほぐれたり、社交的になったり、普段なら気にするような細かな不安が目立たなくなります。これが一般的に“ほろ酔いの心地よさ”と感じられる状態です。
しかし、この作用は判断力の低下と表裏一体です。自制心が弱まることで、不適切な発言や行動につながる可能性があります。また、危険を軽視しやすくなり、事故やトラブルのリスクが高まります。一時的な高揚感の背後には、脳機能の抑制という生理的変化があることを理解しておくことが重要です。

不安軽減効果と心理的依存の始まり

アルコールには不安を和らげる作用があり、ストレスや緊張から一時的に解放される感覚を得られます。仕事や人間関係のストレスから逃れるために飲酒する方も少なくありません。これは、GABA受容体を介した神経抑制作用によるものです。この緊張が解ける感じは錯覚ではなく、実際にアルコールが脳の活動を鎮めているため起こる生理的変化です。
しかし問題なのは、これが心理的依存の入り口になることです。例えば、眠れない時に「とりあえず飲む」習慣がつく、不安やストレスを感じるたびにアルコールを求めるようになる、飲酒なしでは落ち着けない状態に陥ることがあります。こうした行動が積み重なると、飲酒によって感情を調整するというパターンが脳に学習されてしまいます。この段階では、まだ身体的に依存しているわけではありませんが、心がアルコールを求める状態が徐々に根付いてしまいます。また、長期的な飲酒は脳内の神経伝達物質のバランスを変化させ、かえって不安や抑うつ症状を悪化させる可能性が指摘されています。

まとめ

アルコール飲料は適切に利用すれば、生活に彩りを添える嗜好品となりますが、その作用や影響を正しく理解していないと、健康を損なうリスクがあります。本記事で解説したように、アルコールは中枢神経系に作用し、身体的・精神的にさまざまな影響を及ぼします。依存症は誰にでも起こり得る疾患であり、早期発見と適切な対処が重要です。自分の飲酒習慣を定期的に見直し、気になる点があれば早めに医療機関や専門機関に相談することをおすすめします。

参考文献

厚生労働省「アルコール健康障害対策」

国立病院機構 久里浜医療センター「アルコール依存症について」

e-ヘルスネット(厚生労働省)「アルコールの吸収と分解」

国立精神・神経医療研究センター「薬物・アルコール関連障害」

配信元: Medical DOC

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