「町長室で性被害」草津町で起きた嘘の告発事件の教訓「告発を信じる」と「冤罪を生まない」は両立できるのか?

「町長室で性被害」草津町で起きた嘘の告発事件の教訓「告発を信じる」と「冤罪を生まない」は両立できるのか?

●「被害の訴えに寄り添うことと加害者を責めることは別の問題」

ジェンダーとメディアについて研究する宮崎公立大学の四方由美(しかた・ゆみ)教授は「今回のような虚偽の告訴はあってはならない」としたうえで、性被害を受けた人の多くが泣き寝入りしている現状を踏まえて次のように話す。

「性加害はほとんどの場合、密室でおこなわれ、証拠がないことも珍しくありません。そして、性被害を受けた人はショックが大きく、話す内容が曖昧になったり、嘘をついたつもりでなくても事実でなかったりすることがあります。そうした被害にあった人特有の状況に配慮したうえで、本人が嫌な思いをしないように、まずは寄り添う必要があります」

草津町で起きた虚偽告訴事件では、当初、新井氏の告発を信じて支援に関わる人たちも多く、中には町長や町に対して批判や攻撃をする動きがあった。だが、町長の潔白が明らかになった後、謝罪に追い込まれた。

こうした経緯について、四方教授は「性犯罪に限らず、冤罪はどんなものでも防がなければならず、冷静な捜査と報道が常に必要になります。それに、被害を訴えた人に寄り添うことと加害者を責めることとは別の問題です」と指摘する。

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●「誰もがハラスメントの当事者になりうる」

大学の中には、学生などからハラスメントの訴えがあった際、相談員は本人の側に立って対応し、事案に応じて本人の意向を確認したうえで大学のハラスメント対策委員会に申し立てるようになっている学校もあるという。その際、委員会が必要と判断すれば、別の専門の組織を立ち上げて調査にあたることになるようだ。

この仕組みについて、四方教授は「訴えた人に徹底的に寄り添う人と、ハラスメントの有無を判断する人を分けることで、本人を矢面に立たせない対応になっている」と説明する。

大学でのハラスメントと草津町の事件は直接的な関係はないが、被害の声をいかにすくい上げ、本人の立ち直りと加害者への適切な対応を両立させるためのヒントがあるかもしれない。

四方教授は、最後にこう話した。

「性被害の訴えがあったとき、支援する人は本人に寄り添って、できれば専門家と連携をとることが大切です。訴えているということは何かしらの困りごとを抱えているということなので、寄り添う人は冷静に状況を確認する必要があります。

そもそも性被害を訴え出ること自体が非常に勇気のいることなので、その訴えの内容が否定されてしまったら、さらにとてもつらい状況になってしまうからです。

私も含めて、誰もが自分が気づかないうちに他者にハラスメントをしている可能性があります。誰もがハラスメントの当事者になりうるという自覚を持ち、こうした問題にいかに敏感であるかが大切だと思います」

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