一日一冊読んでいるという“本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選んでレビュー。さらに“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作るコーナー。
今月のオススメはこちらです!
また、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長が新刊の中からセレクトする、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」もあわせてお楽しみください!
【元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリスト
アルパカ内田さんが今、売りたい本】
第51回 伏尾美紀『百年の時効』
嵐の夜、夫婦とその娘が殺された。現場には四人の実行犯がいたとされるが、捕まったのはたった一人。五十年後、事件の容疑者の一人が変死体で発見される。現場に臨場した藤森菜摘は、半世紀にも及ぶ捜査資料を託されることに。カギとなるのは、昭和と平成を生きた刑事が残した捜査ノート。上層部から許された捜査期間は一年。警察の威信をかけた最後の捜査が始まる──。

皆さん、こんにちは。時候の挨拶が苦手なアルパカ内田です。
なんと壮絶な物語なのだろう。昭和、平成、令和という時代の記憶を確かに刻み付けたミステリー。昭和100年の節目に相応しい「本物」の傑作の登場に身震いがした。
重厚にして骨太。550ページ超えという圧倒的なボリュームであるが、リーダビリティ抜群でまったく長さを感じさせない。スリリングな展開と強く確かな筆力は、さすが江戸川乱歩賞作家であり、その実力を存分に堪能できる。
1974年、春の嵐の夜に、ある家族を襲った惨劇は、50年の長きにわたり未解決事件となっていた。雷鳴が轟いたその時、一体何があったのか。予測不能なスケールに広がっていく捜査。理不尽な警察内部の組織と、限られた時間との闘い。決して罪を許してはならない。絶対に犯人を逃がしてはならない。己の正義を信じ、プライドを懸けて事件の真相を追求し続ける警察官たち。たった一つの真相を、二心のない誠実さを持ち、三つの時代を経て、四人の刑事が追いかける。
本書は欲に塗れた人間の本質を暴くだけではない。時代を象徴する出来事や、捜査手法の変化を巧みに織り交ぜて、リアリティを際立たせる。複雑に絡みあった糸を解きほぐしていく捜査の過程は、クールな理性が印象に残るが、全編から感じられるのは地の底から沸き立つような情熱だ。これは第一級の警察ミステリーであり、極上の人間ドラマでもある。受け継がれる魂と、並外れた執念に心を奪われた。読後の充実感は特筆もの。まさに時を超えて読み継がれるべき物語なのだ。

アルパカ内田さんの手描きPOP。ご自由に使っていただけます。その際、こちらにご連絡いただけると幸いです

