【五感】触覚で楽しむ絵本3選。さわることから多様な感覚を体験しよう!

①『こねて のばして』—さわり心地をイメージしてみよう

ヨシタケシンスケ『こねて のばして』ブロンズ新社、2017年(画像提供:ブロンズ新社)

最初にご紹介するのは、様々なさわり心地をイメージできる『こねて のばして』。パン生地のようなものを叩いたり、巻きつけたり——。男の子が全身を使って自由に遊ぶ様子を見ていると、お子さんも思わず動き出したくなるはずです。

ヨシタケシンスケ『こねて のばして』ブロンズ新社、2017年、p.4,5(画像提供:ブロンズ新社)

こねるものの形がどんどん変化するので、ページをめくるたびに、「次はどうなるんだろう?」と予想外の展開にワクワクします。

作者のヨシタケシンスケ氏は、肌感覚に訴える表現を追求し、字が少なくてテンポが良く、読み聞かせに向いている絵本をテーマに制作したと言います。(※1)

アニメーションのようなリズム感を楽しむうちに、自然と男の子の動作に興味がわき、「どんな触り心地かな?」と想像が膨らむでしょう。

ヨシタケシンスケ『こねて のばして』ブロンズ新社、2017年、p.10,11(画像提供:ブロンズ新社)

手ざわりのイメージに直接働きかける工夫は、キャラクターの動きだけでなく、色のつけ方や表情にも表れています。
ヨシタケ氏は、線画を描いた後、デザイナーに着彩を依頼してひとつの作品を作り上げており、『こねて のばして』は寄藤文平氏が彩色を担当しました。(※2)

均等に塗られた部分と、色鉛筆の濃淡で表現された箇所の対比が、よりリアルな質感を引き出していると言えるでしょう。

また、ヨシタケ氏は、「少ない線でどこまで表現できるか」を重視し、シンプルな線画で奥深い表情を描き出しています。

「例えば、”本当はやりたいんだけれど、やりたくない顔”なのか、”本当にやりたくない顔”なのか。微妙な表情の描き分けはできるようになりたいです」(※3)という言葉から、鋭い観察眼が、洗練された表現につながっていることがうかがえます。

男の子の表情の変化に注目すると、動きの観察から、キャラクターの気持ちを想像する遊びへと発展していくでしょう。お子さんと一緒に、男の子の動作や表情をまねて、さわる感覚とそこから生まれる感情を楽しんでみてくださいね。

(※1)「ヨシタケシンスケ」、日下部行洋編『別冊太陽スペシャル 絵本作家のしごと』平凡社、2024年、p.92
(※2)堀内日出登巳「直近10年でデビューした先端の絵本作家8人」小野明『絵本の冒険「絵」と「ことば」で楽しむ』フィルムアート社、2018年、p.185
(※3)「ヨシタケシンスケ」、勝山俊光編『絵本作家61人のアトリエと道具』玄光社、2017年、p.51

②『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』—しかけに触れて物語を味わおう

木曽秀夫作・絵『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』フレーベル館、2011年 (画像提供:フレーベル館)

次にピックアップするのは、手を動かして楽しめる『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』。ねずみのしっぽがゴムになっている、ユニークなしかけ絵本です。

木曽秀夫作・絵『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』フレーベル館、2011年、p.4,5

物語は、主人公のねずみが「もしも、自分のしっぽが長かったら…」と想像するところから始まります。

かばさんの虫歯を抜いてあげたり、わにさんの身長を測ってあげたり——「そんな使い方があるのか」と、読者を驚かせるアイデアが次々と飛び出します。

ページをめくると、ねずみのしっぽが画面いっぱいに伸び、さらに引っ張ると垂れ下がるなど、しかけによって絵の印象が変わるのが面白いポイントです。

「どこまで伸びるかな?」「こうしたらどう見えるかな?」と、自分の手で物語に関われるのが、本作ならではの魅力だと言えます。

木曽秀夫作・絵『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』フレーベル館、2011年、p.12,13

『しっぽ しっぽ しっぽっぽ』は、キャラクターの多彩な表情も見どころのひとつ。羊が道路を渡るために車をとおせんぼするページでは、きびきびとした顔つきのねずみと、困り顔の人間たちが、対比されるように描かれています。

また、よく観察すると、すべてのページにカメが登場していることに気づくでしょう。カメは、ねずみとは違う反応を見せる場面も多く、ストーリーに奥行きを感じさせる存在です。

「このシーンではどんな顔をしているかな?」と注目すると、キャラクターの気持ちを想像し、絵本の世界により親しみがわいてきます。

しかけを楽しみながら、お子さんが登場人物に興味を持ち、物語を深く味わう体験ができる一冊です。

配信元: イロハニアート

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