待望の妊娠が判明するも、一志のギャンブル癖は治っていなかった。鈴子の必死の訴えに改心を誓い、夜勤までして働く一志。献身的に支える鈴子は「普通の家族」への希望を抱くが、それは彼の巧妙な仮面だった。
妊娠が判明しても不安の方が勝る
「鈴子、体調はどう?」
「……ううん、まだ少し気持ち悪くて」
入籍から数か月。私の体には新しい命が宿っていました。けれど、喜びよりも不安の方が勝っていました。酷い悪阻(つわり)で横になる私を横目に、一志は相変わらず夜遅くに帰宅する毎日。
ある日、私は一志の財布の中に、見たことのないレシートを見つけました。地方競馬の払い戻し券。そして、机の引き出しの奥に隠されていた、新たな借用書。
「……一志、これ何?」
私が震える声で尋ねると、彼はうつむきました。
「…少しだけ借りた。でも、これはすぐ返せるから」
夫に必死に訴える
涙が止まりませんでした。
「ねえ、一志。もうすぐお父さんになるんだよ? この子の親は私たちだけ。父親はあなた一人なの。この先50年、60年、死ぬまで一緒にいるって決めたじゃない。もうちょっと自覚を持ってよ!」
私は必死に訴えました。泣きながら、彼の手を握りました。
「お願い、目を覚まして。あなたが変わってくれないと、この子を育てられない」
私の必死の訴えが届いたのか、一志はそれから別人のように働き始めました。
「鈴子、ごめん。俺、間違ってた。これからは家族のために生きるよ」
彼は本職の後に夜勤のアルバイトを入れ、睡眠時間を削ってまで働きました。私も、そんな彼を支えようと必死でした。毎朝5時半に起きてお弁当を作り、家事を完璧にこなし、彼が帰ってくれば笑顔で迎えました。

