不同意性交等罪が「美人局」に利用されている?"法の欠陥"の実態…1000万円で示談も

不同意性交等罪が「美人局」に利用されている?"法の欠陥"の実態…1000万円で示談も

●「一発実刑」の恐怖…闘える男性はほとんどいない

不同意性交等罪で被害を申告された場合、疑いをかけられた側の選択肢は、現実的にはきわめて限られるという。

「密室の行為は、合意だったのか、後から翻意して被害を訴えているのかを区別するのは警察でも難しい。疑われた側が相手の主張を覆すほどの証拠を起訴前に入手することは、ほぼ不可能です」

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強制性交等罪以降の法定刑の下限は5年。起訴されて有罪となれば、原則として執行猶予のつかない実刑となる。

従来の強姦罪は3年で、執行猶予もつく可能性があった。

「しかし現在では、起訴されて有罪となれば即実刑となる可能性が高く、被疑者にとっては相当な重圧となります。弁護人としては依頼者の説明が合理的で、勝ち筋が見える事案だと思っても、依頼者の多くは裁判を争おうとは考えず、和解を望むのが現実です」

実際、過去に、ホステスとアフターでホテルに行き、後から「強姦」(当時)の被害にあったと訴えられた男性は「報道されると、経営する会社がつぶれる。早期に和解してくれ」として、1000万円以上支払って示談したという。

「だからこそ、結果的に捜査機関が『美人局』を後押ししているように見えてしまうのです」

●犯罪に利用されているなら「問題ではないか」

中村弁護士は、性被害に遭った女性の相談を受けることがあり、女性の尊厳を踏みにじるような事件も目の当たりにしてきた。それだけに「改正前に時間を巻き戻すべきではない」と考えている。

「それでも半グレと思われるような属性の人たちのシノギに使われているのであれば、法の欠陥と言わざるを得ないのではないでしょうか」

知人の交際相手に手を出したことや、配偶者の存在がありながらホステスと関係を持つことなど、不用意な行動や倫理的に非難される余地があるケースもあるだろう。

前者は、女性が恐喝のおとりとして使われたともいえるケースで、女性が被害者であることは紛れもない事実だ。

「しかし、それでも犯罪と非犯罪との区別は可能な限り客観的であるべきだし、刑事罰の威嚇により本来果たすべき民事上の責任以上の賠償を被疑者が負わせられるのは相当ではない。法律が反社会的勢力のシノギに用いられるのはもってのほかだ」と中村弁護士は指摘する。

「後から女性の言動一つで、実刑を伴う重罰に直結するのはあまりに乱暴すぎます。同意なき性交渉が許されないのは当然ですが、犯罪行為の境目には、もっとわかりやすいラインを引いてほしいと感じます」(中村弁護士)

不同意性交等罪の改正には、施行から5年後に「同意の位置付け」などを見直す附帯決議がついている。

捜査機関に申告できる被害者はわずかで、周囲にも相談できず、泣き寝入りする人は少なくない。だが、美人局の被害も、警察に相談できない「暗数」が多いのではないかと中村弁護士は指摘する。

中村弁護士が担当した事件に「性風俗サービス」を舞台としたものはなかったが、仮に風俗業界でこうした事件が広がれば「業態全体の信頼を損なう。それは種籾を食っているようなものだ」と警鐘を鳴らしている。

【取材協力弁護士】
中村 憲昭(なかむら・のりあき)弁護士
離婚・相続、交通事故など個人事件と、組織が万全でない中小企業を対象に活動する弁護士。裁判員裁判をはじめ刑事事件も多数。その他医療訴訟や建築紛争など専門的知識を要する分野も積極的に扱う。
事務所名:中村憲昭法律事務所
事務所URL:http://www.nakanorilawoffice.com/

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