異端者?聖女?ジャンヌ・ダルクは絵画の中でどう描かれてきたか

「百年戦争」とジャンヌ・ダルクの登場

ヘンドリック・シェーファー『オルレアンに入るジャンヌ・ダルク』ヘンドリック・シェーファー『オルレアンに入るジャンヌ・ダルク』, Public domain, via Wikimedia Commons.

ジャンヌ・ダルクについて紹介するには、彼女が生きた時代に勃発した「百年戦争(1337-1453)」について解説しなければなりません。

百年戦争とは、フランスとイングランド王家の間で起った長期間にわたる戦争のことです。

当時イングランド王は、ヨーロッパ大陸においてフランスと主従関係にありました。つまり、当時のイングランド王は、イングランドの王でありながら同時にフランス王の臣下でもあったということになります。

この状態に異議を唱えたのが、イングランドのエドワード三世でした。1339年にエドワード三世のフランス遠征が始まり、1340年には戦争が本格化しました。ここから約100年にわたって、両国の戦争が続いたのです。

作者不明『写本挿絵のジャンヌ・ダルク』作者不明『写本挿絵のジャンヌ・ダルク』, Public domain, via Wikimedia Commons.

イングランドが優勢に立つ中、1429年にフランスの救世主として登場したのがジャンヌ・ダルクでした。

当時17歳だったジャンヌは「神の声」を聞き、それに従ってイングランド軍と戦いました。そしてイングランドに包囲されていたオルレアンを解放し、フランス軍を勝利に導いたのです。
その後も進軍を続けたジャンヌは、同年7月、奪還したランスでシャルル7世(1403-1461)の即位式を実現させました。

ジャンヌ・ダルクを題材とした作品として有名なのが、『写本挿絵のジャンヌ・ダルク』です。右手に剣、左手に旗を持ち、甲冑を身にまとったジャンヌ・ダルクが描かれています。

この作品が制作されたのは1485年頃とされていて、ジャンヌ・ダルクの生きていた時代に近いものです。当時のジャンヌの特徴をよくとらえているとされ、実際のジャンヌの姿に一番近いのではないかという説もあります。

聖なる者の声を聴いた少女ジャンヌ

ウジェーヌ・ロマン・ティリオン『声を聞くジャンヌ・ダルク』ウジェーヌ・ロマン・ティリオン『声を聞くジャンヌ・ダルク』, Public domain, via Wikimedia Commons.

ジャンヌ・ダルクは、およそ1412年頃、フランス国内のドンレミという村に生まれました。

ジャンヌの父であるジャック・ダルクは土地や家畜、そして石造りの家などの財産を所有しており、地元の名士だったと考えられています。

また、ジャンヌには3人の兄弟と1人の姉がいました。ジャンヌの家族は、百年戦争におけるジャンヌの功績によって貴族の位に引き立てられ、兄弟のひとりであるジャンは、ジャンヌの出征にしばらく同行したほどでした。

ジャンヌの幼少期、長引く戦禍によって略奪が横行し、国内は荒れていました。不安定な状況下で成長していったジャンヌは、13歳の時にはじめて神の啓示を受けたと言います。

その声は教会の方角から聞こえてきて、やがて「オルレアンの包囲を破るよう」彼女に命じました。後にジャンヌ本人が証言したところによれば、彼女にオルレアン行きを命じたのは、聖カトリーヌと聖マルグリット、そして大天使ミカエルだったそうです。

ウジェーヌ・ロマン・ティリオンの『声を聞くジャンヌ・ダルク』では、大天使ミカエルの声を聞いたジャンヌの姿がドラマチックに描かれています。大きく開かれたジャンヌの目が印象的な作品で、まるで自分の使命を見つめているかのようです。

配信元: イロハニアート

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