●国内線での転売目的の航空券購入が詐欺罪にあたる可能性はあるのか?
この最高裁判例は国際線の事案であり、また不法入国という事情もあります。
また、最高裁判例は航空券を呈示して搭乗券の交付を求めた事案であり、「航空券自体」の購入とは少し違う状況にも思えます。
まず、国内線である点から考えてみます。
重要なのは、最高裁が「搭乗券の交付を請求する者が航空券記載の乗客本人であることについて厳重な確認が行われていた」という事実を重視している点です。
国内線の場合、国際線ほど厳重な本人確認が行われていないことも多いと思われます。たとえば、身分証明書などの提示が求められなかったり、航空券を購入した場合にQRコードが送られてきて、とくに本人であることの認証などはないケースもあるでしょう。
そのような場合には、最高裁判例と同じように「本人確認が航空運送事業の経営上きわめて重要」とまでいえるのかは微妙です。詐欺罪が成立するかどうかは、その航空会社がどの程度厳格に本人確認を重視しているかによって変わってくると考えられます。
年末にJALやANAが、本人以外の搭乗を禁じているアナウンスを出していることは、国内線での転売航空券の利用について、詐欺罪が成立する方向に認定される一つの事情にはなりそうです。
次に、航空券自体の購入段階で詐欺罪が成立する可能性はあるでしょうか。
航空券の事例ではありませんが、コンサートのチケットについて転売目的を隠して購入する行為について詐欺罪の成立を認めた裁判例はあります(神戸地判平成29年9月22日)。
●最初から転売目的ではない場合はどうなるのか
次に、最初から転売目的というわけではなく、後から事情が変わって転売するケースについて考えてみます。
たとえば、アーティストのライブで地方に行く人の場合、ライブチケットが当選するか分からない段階で、いろんな地方の航空券だけを押さえておき、当選しなかった場合には売る、ということを行うケースもあるのではないかと思われます。
このようなケースでは、航空券を購入する時点では自分が搭乗するつもりでいたわけですから、購入時点では航空会社を欺いたとはいえず、詐欺罪は成立しないと考えられます。
ただし、このような場合でも、転売された航空券の利用は航空会社の規約に違反しています。後述のように、航空券を買った側が、本人以外利用できない航空券を利用して搭乗する行為が詐欺罪となる可能性があるため、その共犯とされる可能性もあると思われます。
また、民事上の問題について、航空会社は、本人以外の者による航空券の利用を禁じており、購入者は転売者に代金を支払ったにもかかわらず搭乗できないという損害を被るリスクがあります。
そこで、購入者は転売者に対して、民法上の債務不履行責任(民法415条)や不法行為責任(民法709条)を追及できる可能性があります。

