
「昨日たまたま観たテレビでさー」。昼休み、OLたちの何気ない会話から物語は始まった。」「人間関係のストレスが健康寿命に関係するらしい」「結局、孤独がいちばん体に悪いのね」。楽しげに交わされるその言葉を、主人公の男性はそっと聞いていた——。
■「孤独…か」気づかないふりをしてきた現実



40歳独身のサラリーマン・岩倉は、彼女もいなければ親友と呼べる存在もいない。OLたちの会話を耳にした瞬間、それまで見ないようにしてきた事実が胸に落ちてくる。この世界で、自分は「誰からも愛されていないのではないか」。その気づきは、静かに、だが確実に彼の心をえぐった。
■「俺も誰かに愛されたい!」一念発起の行き先は…!?
「俺も誰かに愛されたい!」。そう決意した岩倉だが、誰でもいいわけではないと自分に言い聞かせる。「こんな俺にも好みや欲はある」。そうつぶやきつつ、結婚相談所やマッチングサイトで検索を開始した。
しかし、画面を眺めるだけで手が止まる。「怖いなぁ」。岩倉は語る。「怖いのは女の子だけじゃないんだよ。おっさんだって怖いんだよ」。
■「おじさん好きの子がいるらしいんスよ」若い後輩の一言が、人生を揺らす
早くも心が折れかけた岩倉だったが、翌日、会社の若い後輩から合コンに誘われる。女の子側から「40歳以上の人をひとり入れてほしい」と頼まれたというのだ。「おじさん好きの子がいるらしいんスよ」。
怪しさを感じつつも、岩倉は参加を決意。しかしその場で待っていたのは、理想とはまったく違う、しかし想定外に心を揺さぶる出会いだった。
■「やさしくないほうが生きるのは簡単だ」
作者の國里さんは、この物語で描きたかった言葉として「やさしくないほうが生きるのは簡単だ」を挙げる。人は誰しも、愛されたい、やさしくされたいという気持ちをどこかに抱えている。だからこそ人にやさしくする行為にも、見返りを求める面が出てくるのだろう。
もし一切それを求めないなら、他人に配慮せず自分勝手に生きることは楽かもしれない。しかし、その先に待つのは孤立だ。孤独を避けるためにも、人はやさしく生きる必要があるのだ——と、この作品は静かに語りかける。
■“心配するやさしさ”が生んだ、新しい関係
岩倉は受け身で、自分からやさしさを差し出すことができない人物だった。しかし合コンで出会った相手に対して、「心配する」という形でやさしさを言葉にしたことで、年齢や性別を超えた新しい関係性が生まれたのだ。國里さんは、そうした相手を一人でも持つことが「孤独の予防」になるのではないか、と語る。
■不安に自己防衛…極端なシミュレーションはすべて岩倉の本音だ
作中で描かれる、「おっさん好きの女子」に対する岩倉の極端すぎるシミュレーションは、ギャグとして笑える一方で、彼の不安や自己防衛が凝縮された場面でもある。安心できる結論にたどり着くために、思考が誇張されていく様子の中に、岩倉という人物の弱さと人間らしさが際立っている。
現在、國里さんは不定期でSNSに作品を投稿。更新はまばらだが、読んでくれる人がいることへの感謝は常に忘れていないと語る。彼のpixivには過去作品もまとめられている。この作品で心をギュッとつかまれた人は、ぜひほかの物語にも触れてみてほしい。
取材協力:國里
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