父から贈られた祖父の形見の高級時計が消えた。問い詰めると、一志はそれを質に入れていた。さらに義両親への返済金も全て着服し、ギャンブルに注ぎ込んでいたことが発覚。鈴子の信頼は音を立てて崩壊する。
大事な時計が消えていた
事態が急変したのは、昨日のことでした。 リビングの棚に飾ってあったはずの、重厚な時計の箱が消えていたのです。 それは結婚のお祝いに、私の父が「鈴子の祖父から受け継いできた大事なものだ。一志くんに使ってほしい」と贈ってくれた、100万円相当の高級時計でした。
「一志、あの時計……どこかやった?」
帰宅した彼に尋ねると、彼は一瞬泳ぐような目をして、それからボソッと言いました。
「……メンテナンスに出してる」
「嘘。どこのお店? 預かり証を見せて」
「……なくした」
「嘘つかないで!」
稼いだお金はすべてギャンブルへ
私の怒鳴り声に、一志は観念したように白状しました。
「……質に入れた。別の知人から借金してて、その担保に……」
頭を殴られたような衝撃でした。
「……お父さんが、どんな気持ちであなたに渡したか分かってるの? ギャンブルのために、家族の思い出まで売ったの?」
それだけではありませんでした。私は毎月、彼のお小遣いとは別に「義両親への返済分」として決まった額のお金を彼に渡していました。でも、念のために義母に確認すると、衝撃の事実が発覚しました。
「え……? 返済は1円も受けてないわよ? 一志、あの子、また……」
一志は、私から受け取った返済金も、夜勤で稼いだお金も、全てギャンブルに注ぎ込んでいたのです。
「どうして……どうしてそんなことができるの?」
私は泣き叫びました。
「毎日お弁当作って、あなたが頑張ってると思って、私も一生懸命支えてきたのに! 全部、嘘だったの!?」

