新しい町に引っ越して、半年。真帆は、小3の長女・結衣と、小1の次女・ひよりが、公園で友だちを見つけたことをよろこんでいた。ある日、友だちの母・咲希が、突然、訪ねてきて、「もう遊ばせたくない」と告げる。身に覚えのない非難を受け、真帆は動揺して…。
新しい町と、娘たちの居場所
新しい町に引っ越してきて、半年が過ぎた。
会社と家の往復に追われながらも、私はこの町での生活を気に入っていた。
駅から少し離れた、静かな住宅地。近くには、大きな公園がある。何より、結衣とひよりがのびのびと遊べる場所があることが、母親としてはうれしかった。
小学3年生の長女・結衣と、小学1年生の次女・ひより。
仕事で家を空けたり、下の子に手がかかったりするため、2人の娘のことは、できるだけ自由にさせてきた。過干渉にならないこと…それが、私なりの子育てだった。
「ママ!今日も沙良ちゃんと遊んでくるね!」
結衣がそう言って公園へかけ出していく姿を見るたび、胸が温かくなった。
沙良ちゃん──小学校がちがう、結衣と同級生の女の子だ。
彼女と仲良くなってから、娘たちも公園でよく遊ぶようになり、私は母親である咲希さんとも、自然とあいさつを交わす仲になっていった。
「井上さん、いつもお仕事大変そうですね」
「いえいえ。咲希さんこそ、毎日、公園で子どもたちを見ててすごいです」
そんな、何気ない会話を、何度か交わした。
咲希さんは、3児の母で、専業主婦。責任感が強そうで、子どもたちの様子にも、よく目が届いている人…という印象だった。
だからこそ、その日の訪問は、あまりにも私にとって衝撃的だった。
突然の訪問と「もう遊ばせたくない」の一言
平日の夕方。仕事から帰り、夕食の支度をしていた時だった。
インターホンが鳴り、モニターを見ると、咲希さんが立っていた。けわしい表情で、今にも、何かを言い出しそうな顔をしている。
「どうしたんだろう……」
玄関を開けた瞬間、彼女は間髪入れずに言った。
「もう、うちの子と遊ばせたくないんですけど」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
頭の中が真っ白になり、私はただ立ち尽くしていた。
「……え?」
「結衣ちゃんとひよりちゃんのことです」
咲希さんは、強くなる語気を抑えながら、次々と言葉を重ねた。
「勝手におかしを取るし、遊びに割り込んでくるし、うちの子がガマンしてばかりで……正直、迷惑なんです」
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。
あの2人が?本当に?
「す、すみません……」
気づけば、私はそう答えていた。
「子どもだから、じゃ済まされないですよね?」
「……はい。本当に申し訳ありません」
咲希さんの言葉は止まらなかった。
しつけのこと…「放任主義」なのではないかという言葉、親としての責任について──。
咲希さんからの指摘を受け、私はただ、何度も頭を下げることしかできなかった。

