
監修医師:
吉田 沙絵子(医師)
旭川医科大学医学部医学科 卒業。旭川医科大学病院、北見赤十字病院、JCHO北海道病院、河北総合病院、東京北医療センターなどで勤務後、武蔵浦和耳鼻咽喉科院長となる。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医。
心因性難聴の概要
心因性難聴とは、耳には原因となる病気や障がいがないにも関わらず、難聴が生じている状態です。機能性難聴と呼ばれることもあります。
心因性難聴が生じる背景には、心理的なストレスがあるケースが多いです。
その他、中耳炎や外傷などをきっかけに発症することもあります。
様々な年齢で発症することがありますが、なかでも8~10歳の女児に多くみられる傾向があります。小児の場合、学校の健診などを機に聞こえの悪さが発覚することが多いです。
心因性難聴は、聴力検査で比較的高度の難聴が示される一方、本人や周囲が難聴を自覚しておらず、会話などの日常生活には支障がないケースも少なくありません。
また、診断においては、詐聴(さちょう:意図的に難聴を装うこと)や突発性難聴など他の疾患との鑑別が非常に重要であり、専門的な検査と診察が求められます。
器質的な異常は認めないことから、基本的に特別な治療は必要としません。
ただし、症状の改善のためには、発症の原因となる心理的なストレスを取り除くことが重要であり、必要に応じて心療内科や児童精神科など、専門家の指導のもと投薬やカウンセリングが検討されることもあります。

心因性難聴の原因
心因性難聴の主な原因は、心理的なストレスや自身の性格が関与していると考えられます。
具体的には、学校での人間関係の悩みや家庭環境の問題、テストや発表会などへのプレッシャー、過去のトラウマ体験などがあります。いじめを受けたり、転校して環境にうまく適応できなかったりしたことがきっかけで、症状が現れることもあります。
心因性難聴を発症するのは学童期の子どもに多いものの、大人でも人間関係や仕事などにおいて強いストレスを感じることで、発症することがあります。
また、発症にはいくつかの要因が複雑に絡み合っていることも多く、心因性難聴の約3割は原因を把握できないと言われています。
(出典:一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会「機能性難聴」)
ストレスは人によって感じ方が異なり、同じ出来事でも大きなストレスを感じる人もいれば、そうでない人もいます。また、ストレスは目に見えないため、周りの人に理解されにくい場合もあります。大切なのは、自分がストレスを感じていることに気づき、適切に対処することです。

