生後2日で突然の窒息。「3歳までしか生きられないかも」と医師の宣告も…その原因は「ヒルシュスプルング病類縁疾患」という難病だった【体験談】

nonちゃん

東京都在住のnonちゃんママは、長男(24歳)、二男(21歳)、三男(18歳)、四男(17歳)、五男(15歳)、長女(10歳)の6人の子どもがいます。末っ子のnonちゃんはヒルシュスプルング病類縁疾患、膝蓋骨軟化症(しつがいこつなんかしょう)など、複数の病気を患っています。

nonちゃんは、自身の病気と向き合い、障害を抱えながらも、現在モデル活動をしています。今回は、そんなnonちゃんを支えるママに、これまでの育児生活を振り返ってもらいました。全2回のインタビューの前編です。

生後2日目にわが子が窒息…!何かおかしいと感じながら…1カ月後に診断が
生後4日目のnonちゃん
生後4日目のnonちゃん

妊娠・出産は経過も順調だったというnonちゃんママ。ところが生後2日目、nonちゃんの容体が急変する事態がありました。

「無事出産を終え、母子同室での入院だったので、ときどき助産師さんに見てもらいながら、娘の世話をしていました。生まれてからなかなか胎便(たいべん)が出ず、綿棒にベビーオイルをつけておしりを刺激するんですけどまったく効果なし。助産師さんと『どうしてだろうね』なんて話していました。

そんな中、生後2日目のこと。部屋で授乳している最中に、娘の顔がだんだん黒くなってきて…。口も動かず固まってしまって、手足も冷たくなって…呼吸が止まっている様子でした。もう大慌てで病室から出て、助産師さんの部屋のドアをたたき『この子、息をしてない!』と叫びました。

窒息状態だったため、入院していた産院の隣にあった大きな小児病院のNICU(新生児集中治療室)に搬送。そのまま会うこともできず、娘は2日間入院しました。その後、病院からはとくに何も説明はなく…。『回復したので退院できますよ』とのことだったので、一緒に自宅に戻りましたが、『一体何だったんだろう…』という消化できない気持ちがありました。

自宅に帰っても授乳すると吐き戻しが多くて、なかなか量を飲めない。排便もほとんどできず、ほんの少ししか出ない日が続き、『なにかおかしいな』と感じながら日々過ごしていました。

そのまま1カ月健診まで様子を見ていたのですが、その際に酸素濃度を測ったところ、値が73しかなくて。『あまりうまく息ができていない状態』と言われ、小児病院に入院することに。そこでさまざまな検査をした結果、娘は『ヒルシュスプルング病類縁疾患』という難病で、排便不全の状態であると説明を受けました」(nonちゃんママ)

3歳ごろまでしか生きられない…。突然の宣告に言葉を失った
生後6カ月ごろのnonちゃん
生後6カ月ごろのnonちゃん

「ヒルシュスプルング病類縁疾患」は、胃や腸の蠕動(ぜんどう)運動が悪くなる7つの病気をまとめた総称で、非常にまれな病気。神経節細胞の先天的な欠如による「ヒルシュスプルング病」に対し、神経節細胞が未熟であったり、数が少なかったりする場合、「ヒルシュスプルング病類縁疾患」を起こすとされています。

「病名を言われたときは、本当に何を言われたのかわからなくて。『すみません、もう1度言ってもらっていいですか?』『ヒルシュプルング? フィルスプリング?』と聞き返したくらい。それほど初めて聞く病名で、医師にメモ書きをしてもらって、ようやくその言葉を聞き取ることができました。

診断後、病気について調べましたが、とにかく情報が少ない。医学書や学会の論文も読みあさって『こういう危険性があるんだ』とひたすら勉強しました。

実は、上の子どもにも別の病気があって。病状が重く、投薬しても改善しないこともあって、病気に対して『何かできないか』という姿勢がもう身についていたんです。診断を受けたときは、落ち込むよりも先に『娘にも何かできるはず!』とすぐさま必死で調べました」(nonちゃんママ)

その後も通院が続き、いくつもの検査を受け、生後3カ月のときに好酸球性胃腸炎(こうさんきゅうせいいちょうえん)、濾胞増殖症(ろほうぞうしょくしょう)、ヒルシュスプルング病類縁疾患の3つの合併症であると確定診断されたnonちゃん。今のところ有効な根治療法はなく、対症療法として毎日の飲み薬、1日3回の浣腸液の注入、そして食事形態や量を徹底する、という生活をして過ごすことに。

「ヒルシュスプルング病類縁疾患は、同じ病名でも人によって症状の度合いがまったく違う。娘は排便をするための筋肉を動かす神経が通常より短いということ、また腸の壁に本来あるはずの粘膜がないという話をされました。

さらに1歳をすぎたころに合併症で摂食障害を起こしました。腸の病気なので食べ物が病気にも直結するんです。『一般的な大きさで食材を食べると、合併症により腸内にできた濾胞(ろほう/袋状の構造物に分泌液がたまっているもの)に傷をつけ、出血して血便が出てしまうし、栄養を取れていない可能性がある』と言われ、1cm角にした食材をやわらかくして与えるなど、食事も気をつけるように。

また、『アレルギー反応を起こすとどんな症状を引き起こすかわからないので、アレルギーが出そうなものはいっさいあげないでください』ということも言われて。なかなか離乳食も進まず、どういった食事がいいのか…。とても苦労していました。

医師のアドバイスどおりメニューを毎日記録して毎月提出するという日々を続けていましたが、それでも娘の症状は重く、排便を浣腸などで促しても血便ばかり。ずっと貧血も続いて…。『対応は間違っていないけど、本人の体の中がよくないんだろう』と言われ続けていました。

2歳4カ月ごろに病院を受診したときのこと。その日も検査をしましたが改善はみられませんでした。

『どうしたらよくなりますか?治りますか?』と医師に尋ねると、突然『このままの症状が続けば娘さんは3歳ごろまでしか生きられないかもしれない』と告げられたんです。

思いもよらない回答に、衝撃を受けました。その日は家族全員でつき添って受診していたので、帰り道はみんな言葉を失っていました」(nonちゃんママ)

とにかく笑顔で過ごした1年間。そんな生活で娘の症状に変化が…!
3歳ごろのnonちゃん
3歳ごろのnonちゃん

突然の余命宣告を受けたその日、帰宅後すぐに家族会議をしたというnonちゃんママ。

「上のきょうだいも全員集まって話し合いをしました。『一体何をしたらいいの』『どう過ごせばいいの』とみんな混乱して、泣きだす子もいれば、ショックで話し合いができない子もいた。

けれど『これは家族で話しておかないと、あとで後悔する』と思い、ちゃんと全員で話しました。そして話し合いの結果、『残りの1年、娘がやりたいことを全部やらせよう』と決めたんです。

そんなとき、たまたまテレビで『末期がんのお父さんが自宅に帰って笑顔が増えたら、がんが消えた』という特集を目にしました。『そんなことあるんだ…もしかしたら娘も…』と思い、家族みんなで1年間”娘を泣かせない”というルールを作りました。

おむつで泣きそうならすぐ対応、眠くてぐずりそうならすぐ抱っこして外へ。泣くどころか、なるべくぐずりもさせないように。自分たちにつらいことがあっても、娘にはそれは見せず“娘の前では笑顔で過ごす”ことを、とにかく家族一丸となって1年間徹底しました。

その結果、不思議なことに3歳になるころには症状が軽くなってきたんです…!先生からも『もう対症療法だけで大丈夫そうだね』と言っていただいて。命の危機は脱したかなと、ホッとしました」(nonちゃんママ)

とはいえ、その後も対症療法をする日々は続きます。nonちゃんママがいちばん苦労したのは感染症対策だったそう。

「医師から『人の多いところには連れて行かないように』と言われていました。この病気はまだ不明な点が多く、感染すると何が起きるかわからない。何かが起きると大変だからとにかく感染予防を徹底したほうがいいという理由です。

とにかく感染しないようにと、外出する際はベビーカーに雨用のカッパをつけて、そのうえから除菌スプレーや抗菌スプレーをしていました。外出先で食事をするときも、カッパを大きく開けず、少しだけ開けて手渡しで。渡す側(がわ)も必ず手を消毒してから渡す、という生活。これが本当に大変でしたが、そんな生活は5年ほど続きました。

5歳を過ぎたころ、体もだんだん強くなってきて、ようやくカバーを外せたときに安堵(あんど)したのを覚えています」(nonちゃんママ)

ヒルシュスプルング病類縁疾患とは別に、外部疾患も…。車いすが欠かせない生活
譲り受けた車いすを使用しているnonちゃん
譲り受けた車いすを使用しているnonちゃん

nonちゃんは内部疾患であるヒルシュスプルング病類縁疾患とは別に、外部疾患も抱えています。現在、生活する上で車いすやつえといった歩行補助器具が欠かせません。

「娘が歩き始めたのは1歳4カ月のころですが、そのときから歩き方に違和感がありました。自分の足につまずくような動作が多く、1歩2歩で精いっぱいという感じで。

整形外科で相談したところ、『膝蓋骨軟化症(しつがいこつなんかしょう)』、『体幹障害』、『骨盤未発達』の症状があり、うまく歩けない原因はそこにあると説明を受けました。ヒルシュスプルング病類縁疾患との関連は不明ですが、体幹障害についてはヒルシュスプルング病類縁疾患でおなかに力が入りにくく、その影響で体幹がつきにくい可能性もあると言われています。ただ、はっきりとはわからないのが現状です。

歩行に関しては、2歳ごろからつえの練習を始めました。つえを使ったら“まったく歩けない”というわけではないですが、それでもみんなと同じ距離や時間は歩けない。しばらくして知り合いから車いすを譲ってもらい、乗るようになりました。インソール型装具や骨盤ベルトも使っていて、それらはすべて今も継続しています。まったく立てない、歩けないというわけではありませんが、そういった装具がないと生活ができません。

今、娘は障害者手帳を持っていますが、厳しい現状があります。それは車いすが必須なのにもかかわらず、“まったく歩けない”わけではないので等級が5級だということ。実は障害者手帳の診断基準が明治時代のままで更新されていないため、娘のように“歩ける時間が極端に短い”というような新しい病気に対しての評価が反映されないんです。

等級が5級の場合、車いすは公的支給してもらえないと言われました。そうなると実費で購入することになりますが、娘に必要な車いすは安くても数十万、ものによっては100万を超えるので新品はむずかしい。以前は中古を扱う業者さんも多かったのですが、コロナ禍以降は取り扱いをやめるところが増え、在庫がほとんどない状態。

今は譲っていただいた車いすを使用していますが、自分の身体に合ったものが手に入らないので不自由も多く…。また、中古を使うので劣化も早く、修理も多い。型落ちだと部品が取り寄せられないこともあります。今使用している車いすも本来なら買い替える時期だと思いますが、なかなか手だてがないので、切実に困っている状況。

すぐには難しいとしても、将来的には障害者手帳の等級の改善や社会全体のインクルーシブ化が進んでほしいと願うばかりです」(nonちゃんママ)

どんなに障害や病気があっても、やりたいことをやらせてあげたい
最近のnonちゃん(右)とママ(左)
最近のnonちゃん(右)とママ(左)

現在、nonちゃんは10歳に。nonちゃんママに、これまでの育児や子どもたちへの思いを聞きました。

「娘の症状は、小さいころよりはよくなっていて、今は呼吸困難になるようなこともありません。それでも、対症療法と飲み薬、そして食事形態や量を徹底する、という生活をこのまま一生続けていく必要があります。もし症状が悪化すれば、人工肛門という可能性も…。

それでも、きょうだい含め子どもたちに対して思っているのは、『どんなに病気や障害があっても、それにかかわらずやりたいことをやらせてあげたい』ということ。『病気だから…』と考えるか、『病気や障害があっても、どうしたらできるか』と考えるか。病気とどうつき合って、どう生活をしていくかは、本人と家族の意思で変えられるんだと、これまでの子育ての中で実感しています。

また、『本人がやりたいと思ったことは、1度必ずやらせること』ということは子育ての中で大事にしていることのひとつ。頭の中のイメージだけでは、本当にやりたいかわからないし、イメージと違って続かないこともある。だから『まず自分でやりなさい、考えなさい、調べなさい』と伝えていて。その後、サポートできることがあれば、私は全力でサポートする。それを徹底しています。

あとは、礼儀についてはしっかり伝えています。理由としては、たとえばどこかで障害や持病が悪化して困ったときでも、ふだんからあいさつをして礼儀正しくしていれば、気にかけてくれる人が増えるから。だからどこへ行っても、礼儀正しい行動だけはできるように育ってほしいです」(nonちゃんママ)

お話・写真提供/nonちゃんママ 取材・文/安田萌、たまひよONLINE編集部

突然の窒息や難病の診断、余命宣告など、大変な日々だったにもかかわらず、落ち込むことなく前を向くnonちゃんママと、一丸となって病気や障害に立ち向かう家族の姿が印象的でした。

現在も対症療法を続けながら生活しているnonちゃんですが、病気や障害と向き合いながらモデルとして活動をしています。後編では、そんなnonちゃんを支えるママの思いや、nonちゃんご本人の気持ちを聞きました。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

▼続きを読む<関連記事>後編


複数の病気と向き合いながらモデル活動を続ける娘…6人きょうだいの末っ子を支える家族の思いとは【ヒルシュスプルング病類縁疾患体験談】

nonちゃんママ


PROFILE
6人きょうだいのママ。ヒルシュスプルング病類縁疾患、膝蓋骨軟化症(しつがいこつなんかしょう)など複数の病気を患いながらも、モデル活動をする長女のnonちゃんを支えている。

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●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2026年1月の情報で、現在と異なる場合があります。

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