元太の「お母さん」依存は変わらず、ゆみこは夫への見方が変わりつつありました。ある日、夕食に餃子を作ろうと提案したゆみこに、元太はまたもマザコンな提案をして…。
諦めきれないモヤモヤ
元太の夫婦喧嘩報告事件以来、私の眼には元太のマザコンが以前よりもずっと目につくようになってしまいました。
元太はもうすぐ父親になります。彼との子育ての不安をなくすためにも、このままの彼では困ると思い、悩みは深まるばかり。だからといって、何か具体的なことができるわけではないのだけど…。
元太とはきちんと信頼関係を築いたうえで、お母さんと一定の距離をとってもらうのが、私の一番の理想でした。彼の優しさは魅力的だし、家族を大切に思う気持ちも持っている人です。だからこそ、マザコンだけ少しでも良くなってくれたらと思っていました。
そんなある週末の夕方、その日はおなかの張りがあまりなく体調がよかったため、私はふと思い立って元太に提案しました。
「ねえ、元太くん。明日、夕飯に餃子でも手作りしない?」
元太は、テレビから顔を離さないまま、うれしそうに言いました。
「いいね、一緒にやろう」
私は乗り気な返事にうれしくなりましたが、そのあとの一言で一気に気分が沈んでしまいました。
「じゃ、お母さんにいつもの餃子の作り方を聞くからちょっと待ってて」
思わずぶつけた本音
その言葉を聞いた瞬間、私は自分の耳を疑いました。…え、また?
「なんで?別にお義母さんのレシピじゃなくても、おいしい餃子の作り方はいろいろあるよ」
「えーだって、お母さんの餃子がうまいじゃん」
「でもさ、今日は私と元太くんで食べるんだからお義母さんは関係ないじゃん」
私の言葉に、元太は少しムッとしたような表情を見せました。
「じゃあお母さんの餃子より絶対おいしくできるわけ?」
彼の言葉は、まるで子どもが自分の正当性を主張しているようでした。その態度に、私の不満は頂点に達しました。
「なにその言い方。口を開けばお母さん、お母さんって。じゃあもうお義母さんのところに行って作ってもらいなよ」
私がそう言うと、元太は「なんだよ」と言って部屋を出て行ってしまいました。私の心はぐちゃぐちゃでした。

