目をつぶれなくなった決定的なできごと
ある日、公園から帰ろうとした時だった。
下の子の砂遊びセットが、砂場で使いっぱなしで散らばっている。持ってきてはいたけれど、下の子はその日、砂遊びをしていなかった。
散らばる砂遊びセットに気づき、片付けて戻ってきた沙良に私は聞いた。
「沙良が砂遊びセット使ってたの?」
「……ううん、結衣ちゃんとひよりちゃん」
そして、決定的だったのは、その翌日。
「結衣ちゃん、ひよりちゃん、靴どこ〜?」
沙良が片足立ちで2人に問いかけている。よく見ると、靴が片方無くなっていた。
「宝探しだよ〜、探してみて!」
最初こそ、にこやかにしていた沙良だったけれど、次第に表情がくもり始め、声も弱々しくなっていった。
つかれて沙良がしゃがみ込んだころ、やっと2人がかくしていた靴を持ってきた。沙良の靴は遊具のカゲにかくされていた。
悪ふざけなのは分かる。でも、限度がある。
胸の奥で、何かがぷつりと切れた。
私はずっと、目をつぶってきた。
井上さんが忙しいことも、放任主義なのかもしれないことも、理解しようとしてきた。
でも──。
(このままじゃ、沙良がガマンばかりするだけ……)
気づけば、私は強くそう思っていた。子どもだから、では済まされない。親が線を引かなければいけない。
この時を境に、私の中の2人への違和感は、明確に憤りへと変わっていった。
線を引くのは、親の役目
第2話では、咲希の視点から、結衣とひよりへの違和感がどのように積み重なっていったのかを描きました。
最初はささいなことでも、わが子が傷つき、不安そうな顔を見せる度に、母親の心はゆれ動きます。「子ども同士だから」「悪気はないから」と見過ごすことが、本当に優しさなのか。守るべきものは何なのか。咲希が下した決断は、正義なのか、それとも過剰なのか──。この問いが、次の行動へとつながっていきます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

