TBS退社から紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。アラフォーにして再スタートを切った「出戻り先」でのシングルライフの様子や心境をつづる連載です。第66回となる今回は、2025年末、アンヌさんが自分の“不得手なこと”を痛感した出来事についてつづります(以下、アンヌさんの寄稿です)。
自分の“不得手”を実感したできごとが
40を過ぎて、自分の向き不向き、得手不得手がよくわかるようになってきた気がします。基本的に子どもの頃から文章を読むスピードは速かったし、読むのも書くのも好きだし、どちらかといえば国語力に関しては高いほうかな、なんて自己分析している私。実際にこうしてコラムも持たせていただいているのだからありがたい限り。好きなことがお仕事に繋がっているわけですからね。
一方で、数学は子どものころから笑っちゃうくらいできない。高校生のころは平気で15点とかとっていた記憶があるほど。何がわからなかったのかすらわからない、という壊滅的状態。だから今でも数学的思考やら、空間把握能力やら空間認識能力がとんでもなくひどいレベルなのではと自己分析しています。
先日、私が暮らす札幌市「モエレ沼公園」にて素敵な弾き語りライブがあったので足を運んできたのですが、そこでその「空間認識能力」の欠如を痛感する出来事がありました。
モエレ沼公園はイサムノグチがデザインしたアートパーク。自然とアートが融合した美しい景観が人気で、観光スポットにもなっています。その公園の文化活動の拠点となる施設が公園を象徴するモニュメント「ガラスのピラミッド」。
そちらでライブがあるのでウキウキしていたのですが、私の壊滅的な方向音痴および空間認識能力の危うさに周囲の人間は気づき始めており、迷うことを危惧した私の事務所スタッフにより、モエレ沼まで車で送ってもらえることになりました。
目的地は目の前なのに、入り口が見当たらない!
真っ白い雪に閉ざされたモエレ沼公園にたたずむ、神秘的なガラスのピラミッド。時刻は19時前。ほの暗い中に、神秘的な明かりをポッと灯したように輝く神殿のような存在感。その美しさは息をのむほど。結局「絶対に迷わないように」と念をおされた形で大ピラミッドを見上げるかたちの駐車場まで送ってもらえた私。車を降りて、さあピラミッドはすぐそこ、とくるっと振り返った私。ここで問題が。入口がわからない。ピラミッドは目と鼻の先に見えている、でもどこから入るのかがまったくわからない。駐車場には私ひとり。誰かについていくこともできない……。
周囲を見渡せば小高い雪のつもった丘が私の視線の先にあるではないですか。よくよく見ればひとの足跡が轍のように残っている。なるほど公園だからこういう「原始的」な道を歩ませてピラミッドに向かうのかと私は妙に納得し、その急こう配ともいえる丘を無心で登り始めました。
視線の向こうには輝くピラミッド。よっし! とサクサクと雪山をのぼる私。それにしても雪が、あまりにも深い。日々の犬の散歩で馴れているものの、えい、えいっと右足左足をいちいち雪の中から引っこ抜かねばならないほど。どんどん近づくピラミッド。一面ガラスなので、ライブの設営スタッフのみなさんが忙しそうに動き回るのがよく見える。ただ! 何かがおかしい。
そう、ピラミッドの中の様子は手に取るようにわかるものの、入り口が一向に見当たらないのです。中は見えている、なのに中に入れない、しかも周囲はまっくら。雪はどんどん深くなり、いよいよ靴の中にまで入ってくるほど。これは……さすがに……なにか私はとんでもないミスを犯しているのではないか、と気づいた私(遅い)。

