NHK党の立花孝志氏を名誉毀損で提訴 刑事「不起訴」でも民事で認められる可能性は?

NHK党の立花孝志氏を名誉毀損で提訴 刑事「不起訴」でも民事で認められる可能性は?

NHKから国民を守る党(NHK党)党首の立花孝志氏に対し、兵庫県議会議員の奥谷謙一氏が、名誉を傷つけられたとして約1100万円の損害賠償を求める訴えを神戸地裁に起こしたことが報じられました。

報道(産経新聞、1月7日)によると、立花氏は2024年11月の兵庫県知事選の期間中、街頭演説やSNS上で、奥谷氏について「明らかな嘘をついた」「犯罪があってそれを隠そうとしているんじゃないですか」などと発言したとのことです。奥谷氏側は、これらの発言が虚偽であり、名誉を傷つけられたとしています。

立花氏は、同じ件で奥谷氏から刑事告発も受けていましたが、神戸地検は昨年12月に不起訴処分(嫌疑不十分)としていました。

刑事事件では不起訴となったのに、民事で損害賠償請求が認められることはあるのでしょうか。簡単に解説します。

●刑事と民事は別の手続き

まず大前提として、刑事手続と民事手続は全く別のものです。

刑事手続とは、犯罪を行ったとされる人を国家が処罰する手続きです。起訴するかどうかは検察官が判断し、有罪となれば拘禁刑や罰金などの刑罰が科されます。

たとえば名誉毀損罪の場合、法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(刑法230条)。

一方、民事手続とは、私人(個人間や、企業などの法人を含む)の紛争を解決する手続きです。被害を受けたと主張する人が自ら訴えを起こし、裁判所が損害賠償などを命じることがあります。

民事事件における名誉毀損は、不法行為(民法709条、710条)にあたるかどうかが問題となり、認められれば金銭による賠償を命じられます。

なお、民事上の名誉毀損(不法行為に基づく損害賠償請求)の判断では、実務上、中身の判断枠組みに刑事上の名誉毀損罪の判断枠組みが用いられています。

したがって、刑事事件で不起訴になったとしても、民事で損害賠償を請求することは可能です。

●刑事と民事での「証明の程度」の違い

しかし、「刑事事件で不起訴になっている事件なのだから、民事事件でも証明ができず、現実に請求が認められることはないのでは?」という疑問もあるでしょう。

刑事事件と民事事件では、求められる証明の程度が異なるといわれています。

まず、刑事裁判では、「合理的な疑いを差し挟む余地がない」と裁判官が認める程度の立証が必要だと言われています。

これは簡単にいえば、たとえば「もし彼が犯人ではないとしたら、状況のつじつまがどうしても合わない(説明がつかない)」などの高いレベルでの証明が求められる、ということです。

なぜなら、刑事罰は国家が個人の自由を奪う重大な処分であるため、誤って無実の人を処罰してしまうことを避けるためです。

今回の名誉毀損罪について、刑事事件での不起訴処分は「嫌疑不十分」とされています。これは、犯罪の疑いはあるものの、起訴して有罪判決を得られるだけの十分な証拠がない、という検察官の判断を意味します。

他方、民事事件でも「高度の蓋然性」が必要とされていますが、一般に刑事事件ほど厳格というわけではないと考えられています。

したがって、刑事事件では嫌疑不十分で不起訴となった場合でも、民事訴訟では損害賠償請求が認められる可能性があります。

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