●供述分析し、「自白誘導」の証明目指す
自宅に運び込まれた男性を長兄らが絞殺し、堆肥置き場に遺棄したとされた長兄ら3人の自白については、再審で逆転無罪となった福井中学生殺害事件などに携わった大倉得史(とくし)京都大学院教授に心理鑑定を依頼。
実体験に基づく供述かどうか検討したところ、3人の犯行供述は、三者三様でことごとく食い違い、有罪の根拠ともされた相互補完的関係にはなく、相互に排斥的な関係にあるとした。
さらに弁護団は、言語情報科学などが専門の稲葉光行・立命館大教授に、文書に含まれる語句の頻度や関係性を軽量化・視覚化する「テキストマイニング」鑑定を依頼する。
長兄ら3人と犯行の報告を受けたとされた次兄の妻を合わせた4人の供述を分析したところ、捜査の進行に伴って原口さん主導の犯行ストーリーに収斂されていく構造が確認できた。
一方で公判での調書からは、殺害の実行と原口さんの指示という核心部分で食い違いが大きく、一貫性と整合性の弱さが露呈したという。
弁護団はこれら5つの新しい鑑定書のほか今後追加される鑑定書を合わせ、これまでの再審請求より「質量ともに圧倒的に充実している」と再審開始決定へ自信をのぞかせた。
●「『犯人を差し出さなければ無罪になれない』」は間違い」

大崎事件の再審請求は1995(平成7)年に第1次請求し、2002(平成14)年、鹿児島地裁が長兄らの自白の信用性に疑義を示し、再審開始を決定する。しかし、検察側が不服申し立てして高裁、最高裁では請求は棄却された。
第2次請求も全敗したが、第3次請求で2017(平成29)年、鹿児島地裁は再び、共犯自白の信用性を否定して、再審開始を決める。さらに検察の即時抗告を受けた福岡高裁宮崎支部は、事故死の可能性を認めて再審開始決定を堅持した。
ところが検察側が特別抗告したところ、最高裁は請求を棄却、開始決定を取り消した。最高裁は通常、憲法や判例などに違反があるかどうかを審査し、事実認定まで踏み込む場合は被告側に有利となることが多いが、逆の方向からの事実認定となった。
しかも、事故死だとすると誰が男性の遺体を堆肥置き場に遺棄したのかと疑問を投げかけ、自宅まで運んだ住民2人しか考えられなくなるが、2人の遺棄は証拠関係から全く想定できないと言及した。
次の第4次請求で弁護団はその住民2人の供述を「テキストマイニング」鑑定するなどして2人の供述の信用性に疑問を投げかけたが、地裁、高裁、最高裁ともに「住民2人が遺棄するのは不自然」などとして請求を棄却する。
こうした流れに鴨志田弁護士は「死体遺棄の犯人を差し出さなければ無罪になれないというのは間違い」と批判。
今回の5次請求では確定判決の事実認定にあらためて正面から向き直って、「有罪認定に合理的な疑いが生じれば十分。もう一度、きちんと立証していく」と語った。

