●人材育成や基盤整備──デジタルアーカイブの課題
地域の現場からも声が上がった。
長野県内の貴重な文化資料をデジタル化し、地域資料の保存と活用を進めている県立長野図書館の森いづみ館長は「信州に関わる人たちの『知る権利』や『記録する権利』を保障することにつながっている」と語った。
一方で、デジタルアーカイブを持続するための財源確保の難しさも指摘した。
「デジタルアーキビストの育成や権利処理、システム基盤などに課題がありますが、推進基本法という法的根拠があれば後押しになります」
東京大学大学院の宍戸常寿教授(憲法)は、「記録する権利」と同時に「残す責務」の重要性を指摘した。
「かつて憲法学史を研究しようとした場合、大学の図書室にアクセスできる身分の人間しか利用できなかった状況から、国立国会図書館のアーカイブ誕生や、そしてジャパンサーチの活用により、多くの人々が学術の民主化に参画できるようになりました。知が開かれ拡大していくうえで、デジタルアーカイブが必要であるということです」
●なぜデジタルアーカイブ推進基本法は実現していないのか
セッションでは、基本法がいまだに実現していない理由についても議論された。
文化財アーカイブに取り組んできた笠浩史衆院議員は、かつては超党派の議連として活動していたものの、政治情勢の変化やアーカイブ対象の拡大によって現在は休止していると説明した。
一方、赤松議員らによる超党派「MANGA議連」(マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟)の動きに触れ「デジタルアーカイブの必要性は共有できている」と発言。
そのうえで「コンテンツだけに対象を絞り込んだ基本法は難しい。文化財など全体をカバーできる包括的な理念が必要だ」と述べ、あらためて立法の実現性を検討する考えを示した。

