結衣・ひより姉妹の、強引な関わり方や遊び方に不安を覚えながらも、「子ども同士だから」と自分に言い聞かせ、明確な行動には出せずにいた。しかし、ある事件が決定打となり…。
迷いと葛藤──違和感を否定し続けた理由
結衣ちゃんとひよりちゃんの沙良との遊び方に、私は憤りを感じ始めていた。
けれど、正直に言えば、まだ迷っていた。
2人を公園で見かけなくなれば、きっと、今のこの憤りも晴れてラクになる。でも、沙良はあの姉妹と遊ぶ時間を楽しんでいた。それもまた、事実だった。
「今日も結衣ちゃんたち来るかな」
そう聞かれる度に、胸の奥がちくりと痛む。
私の感じている違和感や憤りは、大人の都合なのではないか──そんな迷いが、判断を鈍らせていた。
だから私は、あえて距離を詰めないまま、遊ばせ続けた。
けれど、一度、気になり始めると、ささいなことが目につく。
声の大きさ。距離の近さ。沙良が何か言おうとする前に、先回りして決めてしまう態度。
「沙良ちゃん、それちがうよ」
「こっちのほうが早いから!」
悪意がないことは、分かっている。それでも、沙良が、一歩、引いてしまう姿を見る度、胸がざわついた。
越えてはいけない一線、"おやつ事件"が残したもの
おやつの時間も、そうだった。
私は時々、沙良だけでなく、周りの子にもおかしを分けていた。
小さなクッキーや、個包装のせんべい。特別なことじゃない。
「はい、みんなでどうぞ」
そう言って差し出す前に、ふと目を離したスキだった。
「あっ……」
ひよりちゃんが、私のカバンの中からおかしを取り出していた。
「これ、もらっていいんだよね?」
一瞬、言葉をうしなった。
悪びれた様子はなく、当然のような顔。
「……あとで配るつもりだったの」
そう言うのが精一杯だった。
胸の奥に、冷たいものが流れ込んでくる。
──勝手に触る。
──断りもなく、取る。
小さなこと。でも、私の中では、確実に一線を越えていた。
それでも私は、その場では何も言わなかった。波風を立てたくなかったし、子ども相手に大人気ないとも思った。

