保育園のママ友同士のコミュニティーの中に、突然現れた森崎さん。最初は驚いたものの、その人懐っこさにすぐに打ち解けていきました。
突如現れた存在
私は桜井紗季、35歳。どこにでもいるような、ごく普通の母親です。
パートで事務の仕事をしながら、4歳の息子・悠人の成長を見守り、夫の翔太とは小さなことで笑い合う。特別豪華な生活をしているわけではないですが、穏やかな毎日を積み重ねていくことが、いまの私にとっての幸せです。
悠人を送り届ける保育園は、広々とした園庭があり、先生たちも優しくて雰囲気が良いです。送り迎えの時間帯には自然とママたちが集まり、軽いあいさつや世間話を交わす。それが私にとっては、小さなコミュニティーであり、社会とのつながりでもありました。
そんな中で起こった———いや、静かに忍び寄ってきたできごと。それが後に、私の穏やかな世界をゆっくりと侵食していくことになりました。
ある春の日。年中クラスに入ってすぐのころでした。門の前で悠人を見送り、帰ろうとした時、声をかけてきたママがいました。森崎あかりさんは、私よりいくつか若く、ぱっと目を引くような明るさを持つ人でした。
森崎「桜井さん? 私、森崎です。今日ちょっと時間あったりします?」
初めて話しかけられたとは思えないほど、距離の近い笑顔。私は少し驚きながらも、悪い印象は持ちませんでした。
私「はい、大丈夫ですよ」
あの時の私は、まさかこの何気ない返事が後々まで響くとは、夢にも思っていませんでした。
新しい友人
私たちはそのまま近くのカフェに入り、子どもの話や家族の話をしました。森崎さんは人懐っこく、よく笑い、会話のテンポも軽い。初対面にしては少し打ち解けすぎている気もしましたが、新しい環境で友人ができることをうれしく感じてもいました。
それから数日、彼女とは頻繁に顔を合わせるようになりました。送り迎えの時間を合わせたかのように近づいてきては、「今日どうする?」「帰りに公園行かない?」と誘ってくれます。私は深く考えず、その好意を自然と受け取っていました。
この時の私はまだ気づいていませんでした。森崎さんの明るさの奥に、“寂しさ”とも“依存”ともつかない影が潜んでいることに。そして、その影がゆっくりと私の生活に濃く落ち始めていることにも。

