●「理屈はいらねえ」バットを持って威圧
「投げ始めてすぐ、2球目くらいで、先生が『違うじゃねえかよ』と怒鳴りながら来ました。ふざけていたわけじゃないのに。『違うんですよ』と説明しようとしたら、『理屈なんかいらねえんだよ』と遮られて」
逆方向に投げていたのは4人いたにもかかわらず、怒りの矛先は和泉くん一人に向けられた。叱責後、指示通りに練習を再開したが、それで終わらなかった。授業終盤の振り返りの時間、再び呼び出された。
「『おいお前、こっち来い』と言われて。先生は片手にバットを持って、地面を叩きながら安全性を力説していました。『ガン』と大きな音がして、すごく怖かったです。
何を言われたかも思い出せません。大勢の前で怒られて恥ずかしくて、恐怖で泣きそうになるのをこらえていました。とにかく早く終わってほしいと思っていました」
その後も叱責が続き、次第に内容は安全指導から、教師の個人的な感情をぶつけるものへと変わっていった。
「『ふざけてんのか』『お前の態度が気に入らない』『俺、こういうのイライラすんだよ』と。意見を言っても聞いてもらえないと思って、黙っていました」
さらに過去の授業の感想欄で「つまらんかった」と書いたワークシートが見つかり、再び叱責された。初心者向けの内容だったため、経験者として正直な感想を書いたものだったが、書き直すつもりでいた矢先だった。
●「消えてしまいたい」追い詰められた心
職員室前に連れて行かれ、担任も加わった。授業中、授業終了直後、さらに休み時間に至るまで叱責が続いた。和泉くんの心は急速に追い詰められていく。
「バットを持って怒鳴られる恐怖、大勢の前で怒られる恥ずかしさ、両親の悲しむ姿を想像する不安。感情が入り乱れて『自分が生きていることで迷惑をかけているんじゃないか』『消えてしまいたい』と思うようになりました」
「死にたい」という思いは消えなかった。帰宅後、どうやって死ぬかを考え、大好きだったゲームのデータを友だちに送った。そして、家を飛び出した。
この日は、受験のための塾に行く予定だったが、和泉くんが向かったのは、塾とは反対方向だった。橋のたもとにスマートフォンを置いた。家族で共有していた位置情報アプリが入っていた。
「スマホを置いて(橋から)身を投げました。しばらく気を失って、意識が戻ると岩のゴツゴツした感覚があり、生きているとわかりました。
不思議と痛みはなくて、ものすごい寒さだけ。眠れば死ねると思って眠ろうとしましたが、意識はなくなりませんでした」

