●学校の対応と「曖昧にされた因果関係」
学校からの連絡は遅く、内容も十分とは言えなかったという。
「病院へ向かう車中で、野球部の顧問から電話がありました。『体育の授業で反抗して指導された』とだけ」
詳しく聞いても状況はわからず、担任からは「和泉は悪くない」「力になれず申し訳ない」と涙ながらに謝罪があったという。
その後、友人の保護者たちから授業中の状況を聞き、少しずつ全体像が見えてきた。ボールを逆方向に投げた理由、高圧的な叱責、バットで地面を叩く様子──。
学校では、授業を受けていた生徒へのアンケートが実施され、指導の理不尽さが裏付けられた。しかし、県教育委員会の調査は遅れ、体育教師の指導と自殺未遂との因果関係は曖昧なままにされた。
「2022年12月の調査で『不適切な指導』は認められたのですが、自殺未遂との関係は曖昧でした。しかも処分は文書訓告のみでした」
●災害共済給付が申請されなかった理由
治療は2024年まで続き、高校生になった今も運動には制限がある。日本スポーツ振興センター(JSC)の災害共済給付についても、申請されないまま時効を迎えた。
いじめや体罰、不適切な指導など、学校生活に起因する事故は「学校管理下」とされ、災害共済給付の対象になる可能性がある。しかし、請求窓口である学校設置者が申請書をJSCに送付せず、手続きは進まなかった。
母親は申請を求め続けた。
2025年7月、文科省とこども家庭庁は連名で「保護者等が提出した支払申請書を学校設置者がJSCに送付しない場合、「権利侵害になる可能性がある」として、速やかな送付を求める通知を出した。
通知を受けて、母親は改めて申請書を提出した。しかし、学校設置者は請求書をJSCに送付しなかったという。
●「恐怖で支配する指導」をなくすために
不適切な指導をおこなった体育教師について、母親はこう語った。
「『熱血先生』と言われ、生徒指導を任されるタイプでした。でも、意に沿わない生徒に厳しく、『しばくぞ』と言うこともありました。県教委の調査でも(教師は)『ルールをみんなで守るのが平等』と答えていましたが、『押さえつける指導に偏っていた』と記載がありました」
母親は、未来の指導者たちに向けてこう訴えた。
「文部科学省の『生徒指導提要』にある『不適切な指導』の具体例を知ってください。大声指導は恐怖で支配するのと同じです。子どもの話に耳を傾け、一人ひとりに寄り添ってください。頭ごなしに押さえつけず、独断で指導しないでください。必要以上の罪悪感を与えないでください。指導の後はフォローしてください。希望を与える温かい指導者になってください」
最後に再び和泉くんが言葉を結んだ。
「僕が今回話そうと思ったのは、不適切な指導で自殺を考える子どもがいることを知ってもらいたいからです。
自分に価値がないと思い、希望が持てなくなりました。一命を取り留めたあと、看護師さんを通して『和泉は悪くない』と言われたことで救われました。
退院後、家族と食べたラーメンが本当においしくて『生きててよかった』と思いました。
この話が、今苦しんでいる子に届いたらうれしいです。子どもが意見を話しやすい先生になってほしいです」

