
「歯医者が怖い」。それは誰もが一度は感じたことのある感情だろう。しかし本作の主人公は、そのレベルが一味違う。音が怖い。口をゆすいだら想定以上に血が出ていて怖い。待合室で聞こえてくる子どもの泣き声すら恐怖をあおる。筋金入りの歯医者嫌いである。それでも彼は、歯医者に通う。理由はひとつ。――歯医者のお姉さんが、気になるからだ。
杏乃さん(@sakana32929)による漫画「歯医者のお姉さんが気になる」は、そんな大人の男の不器用すぎる動機に、読者から総ツッコミが入った話題作である。コメント欄には「甘すぎて虫歯になる」「そこは定期検診行け」「ホワイトニングで解決!」と、愛あるツッコミと現実的すぎるアドバイスがずらりと並んだ。
■怖い、でも行きたい…男心が渋滞する歯科医院



主人公は大の大人である。にもかかわらず、診察台に座るまでがすでに一苦労だ。「キュイーン…」どこかから聞こえる、あの音。「今の音、絶対俺の歯じゃないよな…?」そう思っても、心拍数は跳ね上がる。
治療後に口をゆすげば、赤い水に戦慄する。「え、こんな出る!?」さらに待合室では、泣き叫ぶ子どもの声が響き渡る。「次、俺じゃないよな…?」怖い。怖すぎる。それでも彼は逃げない。なぜなら、あのお姉さんがいるからだ。
■「かわいく描く」それが最大のこだわり
本作で杏乃さんがとくに力を入れたのは、歯医者のお姉さんの描写である。マスク姿はどうしても美化されがちだが、「外してもかわいくあってほしい」という思いを込めて描いたという。その狙いは見事に的中し、読者からは「お姉さんが天使」「そりゃ通うわ」といった声が続出した。
一方、歯医者が苦手な主人公の描写には、杏乃さん自身の実体験が色濃く反映されている。「私自身も歯医者がすごく苦手なので、その感じが伝わればいいなと思って描きました」だからこそ、あの過剰なビビり方が妙にリアルで、笑えるのだ。
■甘いのは飴だけじゃなかった…まさかのラスト
治療がすべて終わったとき、主人公の胸に去来したのは達成感ではなかった。――寂しい。もう、この場所に来る理由がなくなってしまう。そんな彼に、お姉さんはにこやかに言う。「飴、どうぞー」そして差し出される、甘い飴。
だがそれは、ただのご褒美ではなかった。実はお姉さん側にも、ちゃっかりとした“企み”があったのだ。
「かわいいけど、策士…!?」読者がざわついたのも無理はない。「早くくっつかないと、結婚する頃には総入れ歯だぞ」そんなツッコミが飛び交うのも、この2人があまりにももどかしいからだろう。歯医者嫌いな青年と、優しすぎるお姉さん。甘くて痛くて、どこか切ない恋の行方から目が離せない。
取材協力:杏乃
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