「急性硬膜下血腫」を発症するとどんな「後遺症」が残る?医師が徹底解説!

「急性硬膜下血腫」を発症するとどんな「後遺症」が残る?医師が徹底解説!

急性硬膜下血腫の術後の後遺症

急性硬膜下血腫では、緊急手術(開頭手術)によって血腫を取り除き、脳の圧力を下げる治療が行われます。その術後も、前述したような運動障害・言語障害・記憶障害・高次脳機能障害・てんかんといった後遺症が残るケースが多々あります。つまり、手術で血腫そのものは取り除けても、血腫が脳に与えたダメージ自体を完全に修復することは難しいためです。
しかし、手術によって脳の圧迫が速やかに解放されることで、術前より症状が軽減する可能性もあります。実際、術前は麻痺があっても術後に徐々に動かせるようになったり、意識が回復するにつれて会話ができるようになった例もあります。ただし脳挫傷など脳組織そのものの損傷が重い場合は、手術を受けても障害がそのまま残ることになります。
急性硬膜下血腫の術後は、集中治療室(ICU)で生命の維持管理と脳の経過観察が行われ、状態が安定すると一般病棟に移ります。意識がはっきりしてくると、術後に残った障害の程度も明らかになります。以下に、術後に見られる代表的な後遺症について説明します。

術後の運動障害

手術前から片麻痺があった場合、手術で血腫を除去した後に麻痺がいくらか改善することがあります。これは、脳が受けていた圧迫が解除され機能が回復するためです。しかし、脳の神経細胞が損傷していた場合には術後も麻痺が残ることになります。術後は早期からリハビリを開始し、残った麻痺の改善に努めます。
回復するかどうかは、血腫による一時的な圧迫で機能が障害されていたのか、脳組織に治らない損傷が生じていたのかによって決まります。この点は、画像検査の結果や術後の経過を見ながら主治医が判断します。

術後の言語障害

言語障害についても、術後に症状が軽くなる場合と残る場合があります。血腫による圧迫で一時的に言語中枢の働きが抑えられていたケースでは、手術後に言語機能が戻りやすいです。一方、言語中枢が直撃されるような脳挫傷を伴っていた場合には、術後も失語症状が続くことが考えられます。
術後の言語障害に対しては専門の言語聴覚士によるリハビリを開始します。ご家族もリハビリ方法の指導を受け、日常でゆっくり話しかける、といった練習に協力していくことが大切です。

術後の記憶障害

術後しばらくは、患者さん本人にケガの前後(受傷前後)の記憶がない健忘の状態がよく見られます。これは、事故前後の記憶が抜け落ちたり、新しい記憶が一時的に残せない症状です。手術で脳の状態が安定しても、記憶をつかさどる脳深部の損傷があればその後も持続することがあります。
一方、比較的軽症で血腫の影響範囲が限られていた場合は、手術後しばらくして健忘状態から脱し、少しずつ新しい出来事も覚えられるようになる可能性があります。術後の記憶障害の有無・程度は、長期的な生活の自立に大きく関わります。リハビリではメモリハビリテーションを行いますが、ご家族も一緒に取り組み、退院後もメモ帳やスケジュール表の活用を習慣づけることが大切です。

術後の高次脳機能障害

術後に明らかになる高次脳機能障害も少なくありません。手術が無事成功して容態が落ち着いた後、いざリハビリを始める段階になって注意力の障害や意欲の低下、感情コントロールの障害などが明確になるケースがあります。これは、命は助かったものの広範な脳のダメージが残っていたことを意味します。
術後しばらく経っても理解力が戻らない、簡単な計算や作業ができない、落ち着きがなく興奮しやすい、といった状態が続く場合、今後も長期的に支援が必要となる可能性があります。こうした障害に対しては、専門スタッフによる認知リハビリテーションを集中的に行います。ご家族へのサポートも重要で、必要に応じて院内の医療ソーシャルワーカーが退院後の行政サービス利用について提案してくれます。

術後のてんかん

急性硬膜下血腫の術後は、早期にけいれん発作を起こすリスクがあります。これは「早期発作」と呼ばれ、術後数日以内に脳の興奮によって全身けいれんなどが生じるものです。医師は術後の発作予防のため、抗てんかん薬を予防的に投与することがあります。
発作なく経過すれば薬は徐々に減らされますが、退院後に期間をあけて発作が起きるようなら外傷後てんかんと診断され、継続的な治療が必要となります。術後に限らず、退院後も意識消失発作やけいれんが見られた場合には、できるだけ早く主治医に報告してください。

急性硬膜下血腫で後遺症が残る原因

急性硬膜下血腫の後遺症が残ってしまう背景には、ケガそのものによる脳へのダメージが大きく関与しています。ここでは、主な原因となる脳の損傷パターンと、その場合に起こりうる症状について解説します。

脳挫傷

急性硬膜下血腫を起こすような強い頭のケガでは、脳の表面が頭蓋骨に打ち付けられて、脳挫傷(のうざしょう:脳の打撲傷)が生じていることがよくあります。脳挫傷は出血を伴うことも多く、損傷部位によって様々な神経症状を引き起こします。例えば、前頭葉の挫傷では思考判断力の低下や人格変化、側頭葉の挫傷では記憶障害や言語障害などが現れます。
急性硬膜下血腫の場合、血腫のある場所の近くに脳挫傷が合併し、その場所に対応する機能の障害が後遺症として残ることが少なくありません。脳挫傷そのものに対する特効薬はありませんが、腫れ(浮腫)を抑える薬の投与などで悪化を防ぎます。症状として麻痺や言語障害などが見られる場合には、速やかにリハビリ科を含めた専門医療チームのサポートを受けることが大切です。

びまん性軸索損傷

びまん性軸索損傷とは、事故などで頭部が激しく揺さぶられた際に、脳全体の神経線維(軸索)が広範囲に断裂してしまう損傷です。急性硬膜下血腫を伴う重度の外傷では、びまん性軸索損傷も併発しているケースが多く、長時間の意識不明状態や重度の高次脳機能障害の主な原因となります。
びまん性軸索損傷が起こると、脳の特定の部分というより脳全体のネットワーク機能が低下するため、はっきりとした麻痺が出なくても意識が回復しない、意思疎通ができないといった重篤な症状が続きます。損傷そのものを元に戻す治療法は確立されていません。救命できた後も重度の意識障害や高次脳機能障害が残存することが多く、リハビリによる機能回復も限定的です。

脳ヘルニア・脳虚血

急性硬膜下血腫では、血腫による脳への圧迫が強くなると、脳が正常な位置からずれてしまう「脳ヘルニア」という状態を引き起こします。脳ヘルニアが起こると脳幹や重要な血管が圧迫され、脳全体への血流が悪化して広範な脳虚血(のうきょけつ:脳梗塞のような状態)に陥ります。
その結果、脳の様々な領域が元に戻らないダメージを受け、重度の後遺症を残す原因となります。具体的には、長期の意識不明状態(植物状態)、四肢麻痺、重度の認知機能障害など高度障害が残存することが多いです。急性硬膜下血腫の手術は、この脳ヘルニアを未然に防ぎ、脳虚血を最小限に食い止める目的で、一刻も早く行われます。事故発生後は、できる限り早く専門医療機関に搬送されることが重要です。

配信元: Medical DOC

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