沙良との関係に悩んだ末、咲希は結衣・ひより姉妹と「もう遊ばせない」と決断し、真帆に直接、その意思を伝えた。突然の拒絶に動揺しながらも、真帆は事実確認を行い、親として、娘たちと向き合い、謝罪する道を選ぶ。
謝るしかなかった夜
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玄関を閉めた後、私はしばらく動けなかった。
咲希さんの言葉が、何度も頭の中でくり返される。
「もう、うちの子と遊ばせたくないんですけど」
動揺する気持ちを何とか落ち着けながら、結衣とひよりを呼び、私はゆっくりと話を聞いた。勝手に遊びに加わったこと。靴のこと。そして、おかしのこと。
「……やっちゃった?」
そう聞くと、結衣は視線をふせ、小さくうなずいた。事実だったことに、胸がずしんと重くなる。
ただ、どこか腑に落ちない気持ちもあった。
子ども同士の、じゃれ合いの延長線のできごと。大人が線を引けば、済む話だったのではないか…と。
それでも、娘たちのしたことで、咲希さんや沙良ちゃんに、不快な思いをさせてしまったことは事実。親として、相手にも子どもにも、しっかりと向き合う責任がある。
私は娘たちを連れ、早苗さんと沙良ちゃんの家へと向かった。
「この度は、本当に申し訳ありませんでした」
深く頭を下げる。
結衣とひよりも、小さな声で「ごめんなさい」と言った。
異様な雰囲気に顔をこわばらせつつも「いいよ」と答えてくれた、沙良ちゃん。一方で、咲希さんは、静かにうなずくだけで、それ以上の言葉はなかった。
その反応に、咲希さんとの間に、埋められないミゾができてしまったことを、私は確信せざるを得なかった。
見えなかった傷──長女・結衣の心が閉じた理由
帰宅後、ひよりはあっさりと切り替えてケロッとしていたが、結衣はほとんど言葉を発することはなかった。
私自身、結衣は長女として、しっかり者のイメージがあったし、きっと、本人もそう思っていた。その中での今回のトラブルで、本人も相当ショックだったんだろうと思い、その夜はそっとすることにした。
しかし、数日経っても、結衣は同じような様子だった。心配して声をかけても「大丈夫」と答えるだけだった。
ある日の朝。普段なら自分で起きてリビングに来るはずの結衣が、起きて来ない。部屋に行くと、布団の中に入ったままだった。
「学校、行きたくない……」
布団の中から聞こえる結衣の声はかすれていた。
「どうしたの?」
「……もう、みんなと遊べない。みんな、私のこときらいになっちゃった」
結衣の泣きそうな声で告げられた弱音に、私は胸が締めつけられた。
あの謝罪が、結衣の中で「みんなからの拒絶」になってしまったことに、ようやく気づいた。

