血管の老化を防ぐ食事法とは。「地中海食」が動脈硬化と心臓病リスクを下げる理由を医師が解説

血管の老化を防ぐ食事法とは。「地中海食」が動脈硬化と心臓病リスクを下げる理由を医師が解説

血糖値の急激な上昇を抑え、血管の健康を保つ食事として、地中海食は生活習慣病の予防に注目されています。全粒穀物や豆類による食後血糖の安定化、オリーブオイルによるインスリン感受性の改善、青魚のオメガ3脂肪酸がもたらす心血管保護作用など、複数の要素が組み合わさることで効果が発揮されます。本記事では、糖尿病や心臓病のリスク低減につながるメカニズムと、実際の研究結果を紹介します。

中西 真悠

監修管理栄養士:
中西 真悠(管理栄養士)

■経歴
2020年3月女子栄養大学栄養学部実践栄養学科卒業
2020年4月株式会社野口医学研究所入社
同年よりフリーの管理栄養士として活動開始、現在に至る

・法人向け健康経営支援サービスの立ち上げと推進(新規および既存顧客への営業活動を主導)
・食と健康に関する指導プログラムの実施(延べ2000人以上を対象にセミナーや測定会を通じて個別指導を実施)
・SNSでの情報発信によるブランディング
∟ Instagramにて食と健康に関する情報を発信し、フォロワー5万人超を達成
∟ 企業のSNS商品撮影代行やレシピ開発を400件以上実施
・サプリメントや雑貨のお客様相談室にてコールセンター業務を担当
・保険調査業務の実務を担当

地中海食と慢性炎症の関係

慢性的な炎症は、心臓病や糖尿病、がんなど、さまざまな疾患の発症に関与することが明らかになっています。地中海食には、この慢性炎症を抑制する効果があることが複数の研究で示されています。

炎症マーカーへの影響

地中海食を継続的に実践した方々において、C反応性たんぱく質(CRP)やインターロイキン6(IL-6)などの炎症の指標が低下することが報告されています。これらの指標は体内の炎症状態を反映する指標として、臨床現場でも広く用いられています。
オメガ3脂肪酸には抗炎症作用があることが知られており、青魚を頻繁に摂取することで、炎症性物質の産生が抑制される可能性があります。オリーブオイルに含まれるオレオカンタールは、非ステロイド性抗炎症薬と類似した作用機序を持つことが示唆されています。
全粒穀物や豆類に含まれる食物繊維も、腸内環境を改善することで間接的に炎症を抑制すると考えられています。短鎖脂肪酸の産生が促進されることで、免疫システムの調整が行われ、全身の炎症状態の抑制に寄与すると考えられています。ただし、炎症マーカーの変化には個人差があり、年齢や既往歴、遺伝的要因なども影響することが報告されています。

細胞レベルでの作用

地中海食に含まれるさまざまな栄養素は、細胞の中で起こる情報のやり取りに働きかけ、体内の炎症反応を穏やかに調整すると考えられています。研究では、炎症の「指令塔」となる仕組みの働きが抑えられることで、体内で炎症を促す物質の産生が減る可能性が示されています。
この「指令塔」の一つがNF-κB(エヌエフ・カッパー・ビー)と呼ばれる因子です。NF-κBは、細胞がストレスや刺激を受けたときに炎症反応を強める指令を出す役割を持っていますが、地中海食の構成要素によってその過剰な働きが抑えられることで、体の中で静かに続く炎症が起こりにくくなると報告されています。
細胞膜の脂質組成が変化することで、炎症反応の程度が調整される可能性も考えられています。オメガ3脂肪酸が細胞膜に取り込まれることで、炎症性のアラキドン酸代謝物の産生が減少し、抗炎症性の代謝物の産生が増加するといわれています。
これらの細胞レベルでの作用が積み重なることで、組織や臓器レベルでの炎症状態が改善され、結果として疾患のリスク低減につながると考えられています。ただし、これらの機序は実験室レベルでの観察や動物実験に基づくものも含まれており、ヒトにおける効果の詳細については、さらなる研究が必要とされています。

地中海食と2型糖尿病の予防

2型糖尿病は、インスリンの作用不足により血糖値が慢性的に高くなる疾患です。食生活の改善は糖尿病の予防と管理において重要な役割を果たし、地中海食は2型糖尿病の発症リスクを有意に低減することが、多くの疫学調査や臨床試験で報告されています。

血糖値とインスリン感受性への効果

地中海食の特徴である全粒穀物や豆類は、食後の血糖値上昇を緩やかにする効果があります。これらの食品に含まれる食物繊維は糖の吸収を穏やかにし、血糖値の急激な上昇を防ぐといわれています。食後の血糖値スパイク(急上昇)が抑えられることで、膵臓のインスリン分泌細胞への負担が軽減される可能性があるでしょう。
オリーブオイルに含まれる一価不飽和脂肪酸は、インスリン感受性を改善する効果があることが報告されています。インスリン感受性が向上することで、少ないインスリン量で血糖値を適切に調整できるようになり、2型糖尿病の発症リスクが低下すると考えられています。

体重管理と糖尿病リスク

地中海食は体重管理にも効果的であることが示されています。食物繊維を豊富に含む食品は満腹感を持続させ、過食を防ぐ効果が期待できます。。良質な脂質を適度に摂取することで、食事の満足度が高まり、間食の頻度が減る可能性も明らかになっています。
肥満は2型糖尿病の主要な危険因子であり、体重を適正範囲に維持することは糖尿病予防において重要です。
地中海食に含まれる抗酸化物質や抗炎症物質は、悪玉アディポカインの分泌を抑え、インスリン抵抗性の改善に寄与する可能性があります。内臓脂肪の蓄積が抑制されることで、代謝異常のリスクも低減されると考えられています。ただし、体重の変化には個人差があり、年齢や性別、運動習慣なども関係しますので、総合的な生活習慣の改善が重要といえます。

配信元: Medical DOC

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