
映画好きで知られるお笑い芸人・加藤浩次と映画ライターのよしひろまさみちが、おすすめの1本を語り尽くす「加藤浩次とよしひろのサンデーシネマ」(日曜朝10:30-1:25、BS10)。9月28日の放送では、2003年に公開された社会派サスペンス「ミスティック・リバー」を取り上げ、善悪を超えた人間ドラマにまで踏み込んだ濃密なトークが展開された。
■善悪を超えた“グラデーション”がリアルな人間の心理を描く
本作の冒頭で印象的なのは、大司教が指輪を見せて聖職者であることを子どもに認識させる場面だ。実はこの演出、当初の脚本には存在していなかったという。撮影期間中、のちに映画「スポットライト 世紀のスクープ」の題材となった神父による児童虐待事件が報じられ、それを受けてクリント・イーストウッド監督が急きょ演出を加えたものだそう。加藤はフレキシブルな対応力に感心しつつも、社会の空気を映像に取り込むイーストウッドの姿勢に驚きを示した。
イーストウッドが描きたかった世界について問われた加藤は、「物事の善悪だと思う。若い頃は“勧善懲悪”のようにダメなものはダメと思いがちだけど、実際の世の中は曖昧でグラデーションがある。それを全部描いているような映画だなと思った」と評価。本作では複雑に絡み合う人間の心理がリアルに表現されており、単なるサスペンス映画の枠を超えたヒューマンドラマのような印象も受ける。
よしひろも「この原作を映画化しようと思ったら、事件そのものを再現すれば十分に成立する。でも、イーストウッドはそういう作品にしなかった」とコメント。加藤も「サスペンスより、人間ドラマに仕上げた。これは、たまらない」と共感を示した。さらに「リアルな世界が描かれているからこそ、心に残る。釈然としない部分も残るんだけど、それも受け入れなければという感情にさせてくれる」と語り、作品の奥深さを改めて噛み締めていた。
■「ミスティック・リバー」あらすじ
ジミー、ショーン、デイブの3人の少年は、その日、いつものように近所で遊んでいた。そこへ突然、見知らぬ大人が現われ、デイブを連れ去っていく。後日デイブは保護されるが、以来3人が会うことはなくなり、事件の記憶は忘れ去られていった。それから25年。ある日、ジミーの19歳になる娘が死体で発見される。この事件を担当するのは刑事となったショーンだった。やがて、捜査線上にはある人物が容疑者として浮かび上がる…。


