
日常に潜む小さなドラマを切り取る、写真家の眼差し
"イメージの釣り人"とも評されるロベール・ドアノー。その類まれな洞察力で日常の何気ない瞬間を捉え、"ドアノー劇場"とでもいうべき独自の世界を生み出した写真家です。生来の不服従の精神とユーモアに彩られた彼の作品は、時代や国境を超えて多くの人々に愛され続けています。
ドアノーの名を写真史に刻むことになったのは、徹底した性善説に基づく人間に対する愛情と、際限のない好奇心が生み出す忍耐と視線、そして写真に対する飽くなき実験精神でした。生涯、「自分は芸術家ではない」と言い続けた偉大なヒューマニズムの写真家がとらえた作品は、一枚の写真の表現の可能性を私たちに問いかけ、新鮮な輝きをもって多くの共感を呼ぶことでしょう。
アトリエ所蔵のモダンプリント約40点を展示
本展は、ドアノーの遺族が創設したアトリエ・ロベール・ドアノーの全面協力のもと実現しました。その代名詞とも言えるパリを舞台にした作品はもとより、写真家の原点でもあるパリ郊外、時代を彩った芸術家たちの肖像、子どもたちなど、アトリエが所蔵するモダンプリントから精選された約40点が展示されます。
パリの街角で交わされる恋人たちの視線、路地裏で遊ぶ子どもたちの無邪気な笑顔、カフェでくつろぐ人々の何気ない仕草。ドアノーが切り取った一瞬一瞬には、20世紀という"写真の世紀"を生きた人々の息づかいが感じられます。庶民の日常に寄り添い続けた彼の作品は、写真というメディアの持つ力を改めて私たちに教えてくれるはずです。
