●「集団ヒステリーによって虐殺が起きかねない」
差別と偏見の先には何があるか。1923年の関東大震災後、デマによって多くの朝鮮人、中国人、そして日本人とみなされなかった日本人が虐殺された史実を著書『地震と虐殺 1923-2024』で丹念に記録した安田さんは、こう警鐘を鳴らす。
「差別と偏見の先にあるのは殺戮です。川口周辺で自警団的な動きが見られるなど、今の日本社会では、差別が当然のように、時にカジュアルにおこなわれています。明日明後日でなくても、非常事態が起きれば、集団ヒステリーによって虐殺が起きかねない環境は、すでに生まれつつあると感じています」
ネットが主要な情報源となる中、デマに扇動される人も少なくない。
「本当に怖いのは、ワッペンをつけた、わかりやすいレイシストだけではありません。一見、善良そうでどこにでもいそうな若者たちが、レイシストのデモ隊に同調して『クルド人、邪魔だからね』と平然と口にするような状況があることです。
僕が取材した当事者は『普通に見える人たちがそう話すのを聞いたとき、ヘイトを叫ばれるよりもショックでした。電車内、学校、お店の中……こういう人たちがどこにでもいると思うと、社会が怖くなりました」と話していました』」
●デモ隊に同調する「自覚なき差別者」が増えている
2000年代以降の外国人差別の特徴を、安田さんは「下から見上げる差別」と表現する。
「植民地支配以降、日本人の多くは、たとえば朝鮮半島出身者を見下すように差別してきた部分がありました。2000年代以降に変わったのは、『外国人に特権がある』と主張する在特会(*1)のような団体が現れたことです。
こうした人たちは、外国人は優越的な権利を持っている、日本人以上に優遇されている、差別されているのは日本人だと主張しました。まったく筋違い、完全なデマですが、それが一定の支持を集めてしまった。
今、日本社会の少なくない人たちが、こうした発想で外国人に差別と偏見のまなざしを向けている。ただ、ネット上でばらまかれるデマに市民が振り回され、社会に大きな影響を与えている以上、ワッペンをつけたレイシストの存在も、やはり無視できません」

