身体は血糖値を一定の範囲に保つため、インスリンやグルカゴンといったホルモンで精密に調節しています。食事で取り込まれたブドウ糖は細胞内でATPというエネルギーに変換され、生命活動を支えます。この代謝プロセスには解糖系やクエン酸回路などの複数の段階があり、効率的にエネルギーを生み出す仕組みが備わっています。さらに、ブドウ糖を豊富に含む果物や主食類の選び方、食事のタイミングや組み合わせによる吸収速度の調整方法もご紹介します。

監修管理栄養士:
中西 真悠(管理栄養士)
2020年3月女子栄養大学栄養学部実践栄養学科卒業
2020年4月株式会社野口医学研究所入社
同年よりフリーの管理栄養士として活動開始、現在に至る
・法人向け健康経営支援サービスの立ち上げと推進(新規および既存顧客への営業活動を主導)
・食と健康に関する指導プログラムの実施(延べ2000人以上を対象にセミナーや測定会を通じて個別指導を実施)
・SNSでの情報発信によるブランディング
∟ Instagramにて食と健康に関する情報を発信し、フォロワー5万人超を達成
∟ 企業のSNS商品撮影代行やレシピ開発を400件以上実施
・サプリメントや雑貨のお客様相談室にてコールセンター業務を担当
・保険調査業務の実務を担当
ブドウ糖の働きと身体への作用メカニズム
ブドウ糖が身体のなかでどのように機能するかを理解することは、健康管理において大変重要です。その代謝経路や調節機構について詳しく見ていきましょう。
血糖値の調節と恒常性の維持
身体は血液中のブドウ糖濃度(血糖値)を一定の範囲内に保つよう、精密な調節システムを備えています。食事によってブドウ糖が吸収されると血糖値が上昇し、これに応じて膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。
インスリンは細胞へのブドウ糖の取り込みを促進し、余剰分は肝臓や筋肉でグリコーゲンとして蓄えられます。一方、空腹時や運動時など血糖値が低下する場合には、グルカゴンなどのホルモンが働き、貯蔵されたグリコーゲンを分解してブドウ糖を血中に放出する仕組みがあります。
この調節機構が正常に機能することで、私たちは食事の間隔が空いても意識を保ち、活動を続けることができます。しかし、糖尿病などの疾患では、このバランスが崩れ、血糖値の適切なコントロールが困難になる場合があります。基礎疾患をお持ちの方は、医師の指導のもとで血糖管理を行うことが重要です。
細胞レベルでのエネルギー産生
細胞内に取り込まれたブドウ糖は、ミトコンドリアという小器官で代謝され、ATPという形のエネルギーに変換されます。この過程は解糖系、クエン酸回路、電子伝達系という複数の段階を経て行われます。
1分子のブドウ糖からは、細胞内で代謝される過程で、生命活動の通貨となるATPが30分子以上生成されるとされています。このATPが細胞のさまざまな活動に使われることで、筋肉の収縮、神経伝達、物質の合成など、生命活動が維持される仕組みです。
酸素が十分に供給されない状況では、ブドウ糖は乳酸に変換される経路(嫌気的解糖系)でエネルギーを産生します。この経路はATP産生量は少ないものの、短時間で素早くエネルギーを供給できる点で重要な役割を果たしています。なお、実際のエネルギー産生量は細胞の状態や環境条件によって変動することが知られています。
ブドウ糖が豊富に含まれる食べ物
日常的に摂取する食品のなかには、ブドウ糖を直接含むものと、体内で分解されてブドウ糖になるものがあります。それぞれの特徴を理解することで、適切な食品選択が可能になります。
直接ブドウ糖を含む食品とその特徴
果物にはブドウ糖と果糖が含まれており、種類によって比率は異なるものの、多くの場合は果糖の割合が高く、ブドウ糖も併せて含まれています。例えば、ぶどうやりんご、桃では果糖の割合が比較的高く、バナナでは果糖とブドウ糖がほぼ同程度含まれています。
果物には食物繊維も含むため、ブドウ糖のみを含むタブレットなどの製品と比べて消化・吸収が緩やかになります。また果糖は主に肝臓で代謝されるため、ブドウ糖に比べて血糖値の急上昇を起こしにくい特徴があります。このことから、果物は日常的なエネルギー補給源として有用と考えられます。
はちみつもブドウ糖と果糖を主成分とする天然の甘味料です。消化吸収が早く、疲労回復やエネルギー補給に古くから利用されてきました。ただし、乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、1歳未満の乳児には与えてはいけないという注意点があります。
市販のブドウ糖タブレットや粉末は、純度の高いブドウ糖を含む製品です。登山やスポーツの際の携行食として、また低血糖時の緊急対応用として利用されることがあります。これらは吸収が極めて速いという特徴があり、個人の体質や健康状態によって適切な使用方法は異なります。
炭水化物を多く含む主食類
米、パン、麺類などの主食に含まれる炭水化物は、主にデンプンという形態で存在します。デンプンは多数のブドウ糖分子が結合した多糖類であり、消化酵素によって分解されてブドウ糖になります。
白米や精製された小麦粉製品は、比較的速やかに消化吸収されます。一方、玄米や全粒粉製品は食物繊維を多く含むため、消化に時間がかかり、血糖値の上昇が緩やかになる傾向があります。この特性は、食後の血糖変動を穏やかにしたい方にとって参考になるでしょう。
芋類も炭水化物を豊富に含む食品です。じゃがいも、さつまいも、里芋などは、調理方法によって消化速度が変わります。蒸したり茹でたりした場合と、揚げた場合では血糖値への影響が異なることが報告されており、食事の目的に応じて調理法を選択することが推奨されます。

