産後間もないすみれに、母は教団のイベントへの参加を強要しようとする。断っても、「守護が必要」と、聞く耳を持たず、かつての相談ごとさえ、信仰を正当化するために利用される。母の善意に潜む支配欲に、すみれは深い絶望とうら切りを感じていき…。
「宗教イベント」に、生後一か月の孫を連れ出そうとし…
「もしもし…お母さん?」
「すみれ! なかなか出ないから心配したわよ。今ね、支部の先生と美鈴ちゃんの鑑定についてお話ししてたの」
寝室のドアを閉め、声をひそめて応対します。母の声ははずんでいました。彼女にとって、これは「娘のための善意」なのだと、その声色だけで分かってしまいます。
「……鑑定って何? 美鈴は元気だよ」
「それだけじゃ足りないの。人生の節目節目で徳をつまないと!それでね、来週、大きなイベントがあるの。美鈴ちゃんを連れて、顔だけでも出しに来ない?」
「ムリだよ!まだ、産後一か月だよ? 外出だって控えてる時期なのに…」
私は、せいいっぱいの拒絶を言葉に込めました。
「やめて」と言っても、届かない私の言葉
しかし、母には届きません。
「あら、会場は空調も整っているし、みんな、美鈴ちゃんを祝福したいって言ってるわ。先生も、今、行けばこの子の将来に大きなご加護があるって……」
「お母さん、もうやめて!前にも言ったよね? 私はもう、そういう活動には参加しないって」
私の声が少しふるえます。結婚が決まった時も、妊娠がわかった時もそうでした。
お祝いの言葉よりも先に、「これでやっと入会する決心がつくわね」という言葉がとんできたのです。
「すみれ…あなたは、親の心、子知らずね。あなたがぶじに結婚できたのも、子宝に恵まれたのも…私が、お祈りし続けてきたからなのよ?」
「……それは、新平さんと私の努力や、周りの助けがあったからでしょ」
「それもすべて導きなの! 妊娠中に、赤ちゃんの発育が悪いって泣きついてきた時だって、私が先生に写真を送って、お祓いしてもらったから持ち直したのよ!」

