変わらないもの─すれ違いの先で交わした言葉
沙良ちゃんと会わなくなってしばらくたった。
一緒に遊んでいたころのようなワクワクはないけど、少しずつ前向きになり始めていた。
朝の通学路…角を曲がった時だった。反対側の歩道の沙良ちゃんと目が合った。
久しぶりに会えたことでうれしくなる気持ちと同時に、「イヤな顔されたらどうしよう……」と、強い不安が込み上げてきた。
身体が固まり、声も出せずにいた、その時だった。
「おはよう、結衣ちゃん」
それは、あのころと同じ声だった。
一瞬、何も言えなかった。でも、気づいたら口が動いていた。
「……おはよう」
小さな声だったけど、沙良ちゃんは笑った。
「今日、算数のテストがあるの。結衣ちゃんは?」
「え、私は漢字のテスト……」
それだけの会話なのに、胸が少し軽くなった。
あのころのように、約束をするわけではない。
でも、お互いの心は確かにお互いへと向かっている。そんな気がした。
他愛のない会話をしばらくした後、それぞれの学校に向けてまた歩き出す。進む方向は反対だけど、今日はどこか、心強さと晴れやかさを感じていた。
「結衣ちゃ〜ん、またね〜」
振り返ると、沙良ちゃんが手を振っていた。その表情は笑顔だった。
「沙良ちゃ〜ん、またね〜」
ぎこちない笑顔ながら、私も控えめに振り返した。
公園では、もう会えないかもしれない。前みたいには、戻れないかもしれない。
それでも──私たちは、ちゃんと友だちだった。
今も、それは変わっていない。そう思えた朝だった。
大人の決断の向こうで、友情は静かに息づいていた
大人の都合や判断は、ときに子ども同士の関係を簡単に断ち切ってしまう。
けれど、理由を知らされなかった子どもたちは、それぞれの場所で傷つきながらも、相手を思い続けていた。
第5話では、こわれてしまったように見えた関係の中に、確かに残っていた“友情”が描かれる。元には戻れない。けれど、交わしたあいさつと笑顔は、彼女たちが友だちだった証。静かでささやかな救いが、物語をそっと締めくくる。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

