
生活に支障が出るほど動物に好かれる男がいる。連載漫画『動物にモテるサラリーマンの受難』の主人公・半田である。犬や鳥、カモにまで当然のように懐かれ、気付けば背後に動物の行列ができている。そんな彼が、ある日突然、山奥の新店舗へ転勤を命ぜられるところから物語は大きく動き出す。シュールで静かな狂気をまとった日常描写に、「なんだこれ」「笑うしかない」と読み進める手が止まらなくなる作品だ。
本作を手がけるのは、noteやSNSで創作漫画やエッセイを発信している漫画家・NANNOさん(@nanno_koresiki)。もともとデザイナー、商業イラストレーターとして活動していたNANNOさんは、「誰にも頼まれていない、自分発信の作品を作りたい」と考えるようになり、本気で漫画に向き合う決意をしたという。
■山奥なら描ける…から始まった“動物にモテる”設定



漫画を描き始めた当初、『動物にモテるサラリーマンの受難』はあくまで練習の一環だった。「拙くてもとにかく世に出そう」と、2018年秋頃からSNSに投稿を開始したという。「最初はコンセプトを深く考えていなかったんです。ただ当時、パースのかかった背景が描けなくて、『難しい背景が出てくる話はやめよう』とだけ決めていました(笑)」。
そうして目を向けたのが、当時住んでいた家の近くにあった小さな山だった。「山の中の話ならギリ描けるかも、という理由で山奥に行く話にしました」。しかし描き始めてみると、なかなか半田が山奥へ転勤せず、結局会社の背景を描く羽目になったというオチまで含めて、どこかこの作品らしさが出ている。
山奥という舞台から自然と浮かんだのが、「動物にモテるサラリーマン」という設定だった。だが不思議なことに、半田は一番好きな猫にだけは嫌われている。「考えてみれば、私自身が動物好きで、鴨川に行けばカモのお尻ばかり見ていたり、猫は懐かないツーンとした子が好きだったりするので、己の欲望が投影されたのかもしれません」。作者自身の感覚が、半田というキャラクターに静かに重なっている。
■カモに白菜!?「え、ほっこり!?」読者の反応に作者も驚き
NANNOさんが特に気に入っているシーンとして挙げたのが、第13話で描かれる、半田がカモに白菜を置いて帰る場面である。スーパーまでついてきたカモを川へ返す際、何も言わずに白菜をそっと置いて立ち去る半田。その姿に対し、読者からは「やさしい」「ほっこりする」という声が多く寄せられたという。「自分では尖ったギャグ漫画のつもりだったので、『え、ほっこりするの!?』ってなりました(笑)」。作者の想定と、読者の受け取り方のズレが、作品の奥行きを物語る。
一方で、半田が働く会社の部長のような“クズキャラ”については、作者自身は「見ている分には結構好き」だと語るが、読者からは「部長最悪」「こういう人マジで無理」と辛辣な意見が多数寄せられたという。「そこでも『そうなの!?』ってなりました(笑)」。キャラクターそれぞれに対する評価の分かれ方も、この作品の読みどころだ。
■「自分にしか描けない漫画」を手放さないために
NANNOさんは、世間の評価よりも「自分にしかできない漫画」を描くことを大切にしている。「イラストレーター時代、クライアントの言うことを聞きすぎて、自分の絵が何なのか分からなくなった経験があったので(笑)。漫画では同じ失敗を繰り返さないようにしています」。試行錯誤しながらも、自由にのびのびと描く姿勢が、作品全体の空気感を支えている。
今後については、2022年が“22(にゃんにゃん)”の年であることから、毎月22日に飼い猫たちの漫画をSNSに投稿することを決めているという。さらに、コロナ禍で難しい状況ではあるものの、ひとり旅エッセイもライフワークとして描き続けたいと語る。noteでは転勤編も始まり、いよいよ半田は山奥へ向かう。歩く半田の背後には、もちろん動物たちの列。果たして彼は、猫と心を通わせる日を迎えられるのか。山奥で“普通の生活”は送れるのか——。最新話の更新から目が離せない!
取材協力:NANNO
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