夫の衝撃的な発言
夫は笑いながら言いました。
「まあでも正直、うちの嫁の料理よりも、おふくろの料理の方が最高だよな!」
テーブルが一瞬、静まり返ります。
娘は箸を止め、息子は目を見開きました。
義母は「あらあら」と嬉しそうに笑っています。
そして私は、何も言えませんでした。
「お父さん、それはないでしょ」娘が低い声で言いました。
「え? 何が?」
「お母さんがどれだけ毎日頑張って料理してるか、分かってないの?」
「いや、そういう意味じゃなくて」
「じゃあどういう意味なの?」息子も加勢しました。
「おばあちゃんの料理が美味しいのは分かるけど、お母さんの料理をバカにするのは違うと思う」
「バカになんてしてないよ! ただ、母さんの料理は特別だって言っただけで」
義母が口を挟みました。
「息子は正直な気持ちを言っただけでしょ? 私の料理が一番なのは当たり前よ。だって、息子のことを誰よりも分かってるんだから」
「ごちそうさまでした」と言って私は、静かに立ち上がりました。
25年間の我慢と変化
私は食器を片付けようとしました。
「ちょっと、まだ食べてる途中だよ!」夫が言いました。
「私はもうお腹いっぱいです。美味しかったです。お義母さん」
私は機械的にそう言って、キッチンに向かいました。
食器を洗いながら、涙が止まらなくなりました。
結婚して25年。
義母は毎週のように我が家に来て、料理を持ってきました。
最初は「ありがたい」と思っていましたが、だんだん分かってきたのです。
義母は、私に自分の息子を任せたくないのだと。
洗濯の仕方、掃除、服のたたみ方。何をしても、義母は私のやり方を認めない。
夫は、いつも義母の味方でした。
50代になっても、夫は母親離れができていません。
「母さんがこう言ってたから」
「母さんのやり方の方が正しいから」
「母さんが心配してるから」
いつも、母さん、母さん。もう、限界でした。
食器を洗い終えた私は、リビングに戻りました。
「あのね、私、しばらく料理作るのやめます」
「え?」夫が驚いた顔をしました。
「お義母さんの料理の方が美味しいなら、これからはお義母さんに毎日作ってもらってください。私の料理では、あなたは満足できないみたいだから」
「ちょっと待って、そういう意味じゃないんだ」
「じゃあどういう意味? 子どもたちの前で、お義母さんの料理の方が最高だって言ったよね? それって、私の料理はそうじゃないってことでしょ?」
私は義母の方を向きました。
「これからは毎日、息子さんのために料理を作りに来てください。私では力不足みたいですから」
「え、ちょっと、それは……」義母が困った顔をしました。
「あら、嫌ですか? 大好きな息子さんのためですよ? 毎週来てくださってるんだから、毎日でも大丈夫ですよね?」
「いや、毎日はちょっと、私も80過ぎてるし」
「じゃあ、私の料理で我慢してくださいね」
私は夫をまっすぐ見ました。
娘が私に向かって「お母さんの料理、大好きだよ。毎日美味しいって思ってる」と言うと、「僕も」と息子も言いました。
子どもたちの言葉に、私は涙がこみ上げました。
夫は黙り込み、義母も何も言えない様子でした。
その日、義母は早々に帰っていきました。
夫が私のところに来ました。
「ごめん。本当にごめん」
「今さら謝られても」
「俺、分かってなかった。お前がどれだけ毎日頑張ってくれてたか。お前は毎日、俺たちのために作ってくれてたのに」
夫の目には、涙が浮かんでいました。
それ以降、義母が我が家に来るときは事前に私に確認するようになり、来るのは月に一度になりました。
適度な距離が保てるようになり、今は心穏やかな日曜日を過ごしています。
【体験者:50代・女性パート社員、回答時期:2025年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:藍沢佑菜
管理栄養士の資格を持つ、2人の自閉症男子のママ。自身の育児環境の変化をきっかけに、ライター活動をスタート。食と健康を軸に、ライフスタイル全般のコラムを得意とし、実体験に基づいたリアルな記事を執筆中。専門的な情報を「わかりやすく、すぐに日常に取り入れられる形」で伝えることが信条。読者の「知りたい」に寄り添い、暮らしを整えるヒントを発信しつづけている。

