●残業命令に応じる必要がある場合
正当な残業命令であれば、従業員は残業命令に応じる義務があります。
「残業キャンセル界隈」の若者のケースでも、正当な残業命令に対し、単に「定時だから帰りたい」という理由のみでは、拒否は困難です。
この場合の「残業キャンセル」は、単なる業務命令違反になってしまいます。
しかし、前述のように、本人の体調に問題がある場合や、家庭の事情(育児や介護など)がある場合、既に長時間労働が累積している場合、嫌がらせ目的の残業命令である場合、などは、拒否が認められる可能性が高いと考えられます。
●残業拒否で懲戒処分や解雇などをされることはあるのか
では、従業員が残業を拒否した場合、会社は懲戒処分(戒告、減給、出勤停止や解雇など)を行うことができるのでしょうか。
適法な残業命令を正当な理由もなく拒否した場合には、業務命令違反として懲戒処分の対象になり得ます。
ただし、実際に懲戒処分が有効となるハードルは低くありません。労働契約法15条では、懲戒処分が有効となるために「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要であると定めています。
少し難しい言葉ですが、簡単にいえば以下のようなものです。
1)処分の理由となる事実と根拠があるか(合理性) 就業規則に懲戒の根拠があるか、本当に業務命令違反といえる事実があったのか、などの点です。
2)行為と処分のバランスが取れているか(相当性) 仮に違反があったとしても、やったことに対して処分が重すぎないか、という点です。これを「相当性」といいます。 過去の勤務態度や、反省の態度、過去の同種事例との均衡なども考慮されます。
たとえば、適法な残業命令を、1度だけ正当な理由もなくキャンセルした、という事実があったとしても、それだけで最も重い「懲戒解雇」を選択することは、行為に対して処分が重すぎるため「相当性」を欠き、無効となると考えられます。
一方で、会社からの注意指導を無視して何度も拒否を続けたり、他の従業員の業務を妨害したりするなど悪質性が高い場合には、減給や出勤停止、さらには懲戒解雇といった重い処分であっても、その有効性が認められる可能性が高まっていきます。

