結婚5年目の美沙は、夫と2人で穏やかに暮らしていました。しかし、少しずつ変わっていく夫の態度に、違和感を覚え始めます。
誠実な夫
私は美沙、32歳。事務職で働く、ごく普通の会社員です。夫の悠斗とは結婚して5年目。夫は誠実な人で、どちらかというと控えめな性格です。口数が多いわけではないけれど、「この人となら穏やかに暮らしていける」と思い、プロポーズを受けました。
私の一日は単調です。朝起きて、簡単に朝食を作り、仕事に向かう。帰宅後は夕飯を作って、録画していたドラマを夫と見る。他の人からは「つまらない」と言われるかもしれませんが、私はそんな穏やかな日常が気に入っていました。
特に家事の中では掃除が一番好きで、毎日空気を入れ替え、掃除機で床をきれいにし、部屋が整っていく様子を見るのが心地良いです。夫も、私の几帳面さを「助かるよ」と笑ってくれていました。
休みの日は私の好みに合わせてくれるし、外食より家ごはん派。週末の買い物も、ソファでの昼寝も、散歩も、なんてことない時間が積み重なって幸せになっていました。
結婚生活にドラマはいらない。私はそう信じていました。
少しの違和感
ただ、今になって思うと、気づかないうちに夫と私の間には、小さな亀裂が入っていたのかもしれません。私はよく、寝室やリビングで夫の姿を眺めては「この人は嘘なんてつけない」と、勝手に信じていました。
落ち着いた声、自分の非を認める素直さ、そして私の愚痴にも黙って寄り添ってくれる姿。それら全部が「この人は裏切らない」という根拠になっていました。不倫もののドラマを見ても、完全に他人事として俯瞰していました。
そんなある日、夕食の最中にスマホを触る夫の姿を見て、ふと思いました。
私(悠斗……最近、ちょっと変わったかも?)
帰宅時間が遅くなる日や、スマホを見る時間が増え、夫婦の会話が減っていました。しかし、結婚して数年経てば多少の変化は仕方のないことです。疲れているのかもしれない、仕事で何かあったのかもしれない。私はそうやって、都合よく理由を当てはめました。
私自身が穏やかな生活にしがみついていたので、実は感じていた嫌な予感を封印してしまったのです。
この時の私はまだ知りませんでした。平穏な日常が、ある一つの違和感をきっかけに音を立てて崩れ落ちてしまうなんて。

