
「これって、違法じゃない?」と思った時には、もう遅かった——。アパレル業界に約10年身を置いた経験をもとに、実話ベースの漫画『女社会の知られざる闇。』を描くゆき蔵さん(@yuki_zo_08)。身バレ防止のフェイクは入れつつも、描かれるのは時代錯誤なパワハラ上司やクセの強すぎる顧客とのリアルなやり取りばかりだ。今回取り上げるのは、どの業界でも起こり得る「出勤時間」をめぐる理不尽なトラブルである。
■「15分前でドヤ顔?」静かに始まった早出地獄



異動先の店舗は、自宅から片道2時間弱。距離的にも時間に融通が利かず、ゆき蔵は自主的に早めに家を出て、毎日15分前には店舗に到着していた。だがある日、その行動が思わぬ形で牙をむく。店長から投げつけられたのは、「いいご身分ね。15分前出勤なんて」という嫌味だった。「異動してきたばかりなら、普通は1時間前に来るべきでしょ?」と、当然のように言い切られる。しかしタイムカードは定時打刻。つまり、1時間分の“サービス早出”を前提とした職場だったのだ。
■「言ってなくてごめんね…」同僚も飲み込まれていた暗黙ルール
後から同僚のキコちゃんが、周囲を気にしながら小声で「事前にお伝えしてなくてすみません」と声をかけてくる。聞けば、キコちゃんも同じように無給の早出を強要されていたという。家が遠いゆき蔵には、さすがにそこまで求めないだろうと思い、あえて言わなかったとのことだった。だが実際には、容赦なく同じ“ルール”が適用された。
■無給の早出はアウト、でも現場では“当たり前”
早出そのものを依頼する行為が、即パワハラに当たるわけではない。しかし、給与を支払わずに強要するのはパワハラ以前に明確なコンプライアンス違反である。就業時間外の早出は時間外労働であり、通常の時給の1.25倍が支払われて然るべきだ。この理不尽な状況について、作者のゆき蔵さんは「毎日1時間前出勤が基本で、定時に出勤すると一日中嫌味を言われ続けました」と振り返る。退勤間際にもわざと仕事を振られ、その時間も店長によって抹消。すべて無給だったというから、笑えない。
■「傷の舐め合いはやめて」売り場はワンマン店長の城だった
さらに追い打ちをかけるように、ストック整理の方法について注意された場面では、キコちゃんが手伝おうとした瞬間、「そういう傷の舐め合い、やめてもらえる?」ときつい言葉が飛んだ。売り場を良くするためにスタッフの自主性を尊重する店長も多い中、この店長は真逆だったという。「自分の城(売り場)によそ者のアイデアなんて必要なかったみたいです」。完璧なワンマン体制のもと、下のスタッフは合わせるしかなかった。
華やかに見えるアパレル業界の裏側で、静かに横行するサービス早出と理不尽な支配。『女社会の知られざる闇。』は、「あるある」で済ませてしまいがちな職場の闇を、確かな温度で突きつけてくる。
取材協力:ゆき蔵
※記事内に価格表示がある場合、特に注記等がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

