
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、漫画家・津村根央さんの『岩毱山大観光ホテル』だ。
同作は旅好きな主人公と謎の老人が不思議な宿を巡る様子を描いた一作で、COMIC熱帯に読切作品として掲載されている。以前津村さんのX(旧Twitter)に投稿されると、4000以上の「いいね」を獲得。そこで作者の津村さんに、同作を描いたきっかけについて話を伺った。
■案内図に載ってない部屋が盛りだくさん…広大すぎる不思議な宿

ある日の夜、目的の宿に到着した旅好きの主人公。無人の受付でチェックインを済ませると、主人公は素敵なロビーを見て「これは当たりだぞ」と確信する。
その後、案内図をもとに部屋に向かったもののなかなかたどり着くことができず、気がつけば迷子の状態に。しかし「迷子は宿の醍醐味」と思う主人公は宿の探検を始め、しばらく歩いていると「ギャアー」という悲鳴が聞こえる。そして、叫び声の方を見てみると、ひとりの老人が尻もちをついており…。
読者からは「怖くもあり、ワクワクもあって面白い作品」「不思議な感覚になった」などの声が上がっている。
■かねてからの夢「巨大な旅館やホテルを延々と探検したい!」を反映させた?

――『岩毱山大観光ホテル』を描くに至った経緯をお教えください。
元々旅行が好きなのですが、旅そのものだけでなく「観光地」にある「観光」という概念が放つ独特の魅力にも心惹かれています。
旅行の目的は名所や美しい風景・グルメなどだと思いますが、現地には必ず「観光」のためのオブジェクトが存在しています。例を挙げると「土地や施設のチラシやリーフレット」「看板や案内板」「無名のマスコットキャラクター」などなど。
それらは美しい絶景を前にすると視界に入っていても旅の思い出からは除外されてしまうようなささやかな存在ですが、いつの間にかそこに注目するのが私の旅の醍醐味になっていました。
「観光」を構成する飾らない善意、おかしみや郷愁、詩情に注目し、その魅力を味わえるような作品を作りたいと思っていました。
短編の連作集を作る機会をいただき、1作目は、巨大ガニを捏造する町おこしのお話『胡孫町~』。全てが架空の観光リーフレットを作り、そこから逆算する形で町おこしの経緯を物語にしました。
2作目である『岩毱山~』は、ホテルや旅館の「館内図」や「案内板」などがちりばめられた館内の光景や、内部構造の妙に着目しました。物語については自分のかねてからの夢、「巨大な旅館やホテルを延々と探検したい!」という願望を反映させています。
――描いたうえで「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあれば教えてください。
増築が進んで複雑化した館内の絵です。ホテルらしさと、迷宮のようなビジュアルの両立に苦心しました。コマ割りも工夫しているのでじっくり見てほしいです。おサルが一切活躍しないところも見どころのひとつです(笑)。
――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共に教えてください。
ラストの見開きの絵。延々と続く室内から解放される爽快感と、異形のような建物から飛び出す臨場感が気に入っています。描いていて特にたのしいページでした。
――私も同作を読ませていただきましたが、不思議な世界観にあっという間に引き込まれてしまいました。他にも様々な反響があったと思いますが、特に印象的だったコメントを教えてください。
みなさん色々な点に反応してくださっていて、どのコメントも大変興味深く拝読しました。巨大なホテルをはじめとする旅行のディティール部分のあるあるが好きな方、迷宮やリミナルスペース的な世界観が好きな方、元支配人の夢の切実さに共感してくださる方、漫画の構造の工夫に気づいてくださる方。「これを読んで人生初の一人旅を決意した」というコメントには、驚きと嬉しさを感じました。
――読者へメッセージをお願いします。
『岩毱山』を読んでくださったみなさま、ありがとうございました。まだの方、COMIC熱帯にて無料公開中ですので、ぜひ読んでいただければうれしいです。
第1弾の『胡孫町〜』はKindleで有料配信中です。
第3弾は“おみやげ”をテーマに現在執筆中です。お楽しみに!

