5度目の再審請求に挑む大崎事件と「死体遺棄の謎」 98歳・原口アヤ子さん、執念の闘い   殺人ではなく事故死? 5度目の

5度目の再審請求に挑む大崎事件と「死体遺棄の謎」 98歳・原口アヤ子さん、執念の闘い 殺人ではなく事故死? 5度目の

●死体遺棄はあったのか?

男性を運んだ住民2人の供述の信用性を第4次請求で検証した弁護団は、住民2人は男性が死んでしまっていることにパニックになり、男性を牛小屋わきの堆肥置き場まで運び入れ、堆肥をかぶせたのではないかとみているようです。

しかし、2人が道路端に横たわっていた男性を自宅まで運んだことは、少なくともアヤ子さんら複数の住民は知っています。隣近所、互いをよく知っている狭い集落の住民同士が助け合うなかで行った行為です。

確かに気が動転すれば不合理な行動をとることもあるでしょう。ただ、そのような観点から捜査を行った資料は出てきていないので、確証はなく、不自然さの方が優る気がします。再審を認めなかった最高裁決定も前述の通り、2人が埋めたという可能性を否定しています。

では、男性宅と隣接して暮らす長兄、次兄らが死んでいる弟の死体を堆肥置き場に運ぶでしょうか。こちらも、警察がそのような疑問をもって聴取を行った形跡がないため、動機が見つかりません。これも不自然なままです。

ほかに誰か運んだ人がいるのでしょうか? これまで明らかになった捜査資料などからは見当たりません。強盗事件などの形跡もないようなので集落外の人が遺棄したという可能性はまずないと思われます。

もし、警察が殺人容疑という仰々しい捜査ではなく、まずは死体遺棄の疑い事案として冷静に住民ら関係者から話を聴いて回っていたら、違った展開になった可能性はあったかもしれません。

それでも進展がなかったとしたら、別の可能性も探る必要が出てきたでしょう。

「男性は自宅に運び込まれたころには死亡していた」という弁護団の鑑定結果とは相容れませんが、亡くなった男性自ら、堆肥置き場に歩いて行った可能性はないのでしょうか。

実は死体発見の一報、『南日本新聞』は1979年10月16日付朝刊で、男性がうつ伏せ状態で堆肥に埋もれた形で見つかったことを報じ、「事故死、殺人の両面で捜査している」と記しています。

と言うことは、堆肥に埋もれた状況からでも「事故死」の可能性もあると警察も当初はみていたことになります。

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その後の城教授の解剖所見では「両肺の気管支内腔に堆肥の粉末等が侵入したようには見受けられない」とあり、断定はしていませんが、男性は死んでから運ばれてきた可能性を示唆しています。

ですが、もし自宅土間まで運ばれてきた男性がまだ生きていて、自分で堆肥置き場まで歩き、そこで力尽きて堆肥置き場に倒れ込んだとすれば、気管支に堆肥粉侵入がなくてもおかしくないのかもしれません。

発見時、死体の上には堆肥が20センチから40センチほどかぶさっていたとされます。一番高いところで80センチほどの堆肥の山に自分で倒れ込んで死んだ後、発見までの丸2日間で沈み込んだということはあり得ないでしょうか。

保険金狙いの悪質な放火殺人事件とされたのが再審の結果、自然発火による火災事故だったと認定された大阪の東住吉事件のようなケースもあります。

大崎事件は50年近く前の事件です。死体遺棄の謎なども含め新たな証拠を探して裁判所を説得することは難しいことかもしれません。それでも、再審弁護団は幾度となく、この高い壁に挑んできました。

逮捕から服役中、服役後もずっと無実を訴えてきている原口アヤ子さんは現在98歳。介護施設に寝たきり状態ですが、鴨志田祐美弁護士が「第5次再審請求を始めます」と語りかけると、笑顔になったといいます。その第5次再審請求が、ついに始まりました。

14人の弁護団は手弁当で「開かずの扉」をなんとか押し開けようと奮闘するとともに、証拠開示のルール明文化、検察の抗告禁止など再審制度のあるべき姿も問い続けています。

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