『老人性難聴』になりやすい人の特徴とは? 「糖尿病・高血圧・喫煙歴」で注意が必要なのは?

『老人性難聴』になりやすい人の特徴とは? 「糖尿病・高血圧・喫煙歴」で注意が必要なのは?

年齢を重ねると「子どもや孫の声が聞き取りにくい」「テレビの音を上げがち」といった悩みが増えていきます。これは老人性難聴の代表的なサインで、放置すると生活の質や認知機能に影響することがあります。そこで、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医の小川先生(オトクリニック東京院長)に、老人性難聴の仕組みから対処法まで詳しく解説してもらいました。

※2025年10月取材。

小川 郁

監修医師:
小川 郁(オトクリニック東京)

慶應義塾大学医学部卒業。その後、慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科助手、静岡赤十字病院耳鼻咽喉科医局員、ミシガン大学クレスギ聴覚研究所研究員を経て、1995年東京電力病院耳鼻咽喉科副科長。2002年慶應義塾大学医学部教授、2017年には慶應医師会会長、2021年慶應義塾大学名誉教授となり、同年より現職。2022年から公益法人国際耳鼻咽喉科学振興会副理事長。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医、補聴器相談医、日本気管食道科学会専門医、補聴器適合判定医。

老人性難聴とは? 仕組みと症状

老人性難聴とは? 仕組みと症状

編集部

はじめに、老人性難聴について教えてください。

小川先生

加齢によって内耳の有毛細胞や聴神経、さらに音を意味づける脳の処理機能が少しずつ衰えることで生じる感音難聴の一種です。病気というより「機能の老化」に近く、「老人性」とは言いますが、実際のところ聴力は30代以降から落ちており「加齢性難聴」と呼ぶことも増えてきています。多くの人が、まずは高い音が拾いにくくなり、生活への影響も小さくはありません。

編集部

なぜ高い音から聞こえにくくなるのですか?

小川先生

音の高さを周波数別に受け持つ「蝸牛」では、高音域を担当する部位が入口側にあり、血流や代謝の負担を受けやすい構造なのです。入口側にある分、多くの音にさらされているため、加齢の影響が最初に現れやすいのです。結果として女性や子どもの声、電子音、呼び出し音が聞き取りにくくなります。また、高音域を担当する部分の有毛細胞の方が短く繊細で、刺激に弱いことも理由の一つです。

編集部

どんな症状が現れますか?

小川先生

複数人の会話で内容が追えない、静かな場所なら聞こえるのに騒がしい場所だとわからない、テレビの音量が家族より大きい、といった変化が典型です。同じ音量でも「母音はわかるが、子音が聞き取りにくい」という状態にもなりやすく、本人は「相手がはっきり話さないせい」と感じ、トラブルの原因になることもあります。

編集部

自分では気づきにくいというのは本当なのですか?

小川先生

はい。聴力は日々少しずつ下がるため、体感しにくいのが実情です。「聞き返しが増えた」「返事がちぐはぐ」と家族に指摘されたら、初期変化を疑ってください。耳鳴り、耳閉感が出る場合もあります。早く気づくこと自体が、後の生活の質やリハビリテーション(以下、リハビリ)の成果を左右します。

生活への影響と進行予防

生活への影響と進行予防

編集部

特に発症しやすい人の傾向などはありますか?

小川先生

高齢者はもちろん、工場勤務や音楽関連など、大音量に長年さらされてきた人、糖尿病・高血圧・喫煙歴のある人は進行が速い傾向があります。家族歴がある場合も注意が必要です。難聴に関わっている遺伝子があると老人性難聴になりやすいことがわかっています。

編集部

老人性難聴を放置するとどうなりますか?

小川先生

聞き返しが億劫になると聞き取れないままにしてしまい、誤解が増えるようになりがちです。さらに、会話の負担が増えて人付き合いを避けるようになり、孤立感や抑うつが進みます。人と話さなくなり音声入力が減ると、脳の言語処理ネットワークへの刺激も減少し、認知機能の低下と関連することが示唆されています。さらにガス漏れや火災報知器などのアラーム音や車の接近音などにも気づきにくくなり、安全面でのリスクも高まります。

編集部

受診するタイミングはいつがよいですか?

小川先生

「聞き返しが増えた」「テレビの音が大きいと言われる」「騒がしい場所で会話が苦手になった」と気づいた時点が目安です。軽度のうちに対応できると脳の音処理の可塑性(かそせい)が高く、慣れも早い傾向があります。導入が遅れるほど、装用後のトレーニングに時間を要します。

編集部

治療で元に戻すことはできますか?

小川先生

加齢に伴う感音難聴は、現時点で薬や手術で元に戻すことはできません。「人工内耳」もありますが、基本的に、高度~重度難聴者向きで一般的な加齢による難聴には不適応です。大事なのは、まずは早期発見、次に早期の補聴器導入で、低下した音域を補って脳への音刺激を維持します。第三は、専門家による聴覚リハビリです。この三本柱が将来の差を生みます。

配信元: Medical DOC

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