認知症で寝たきりになる?寝たきりが症状に与える影響、ケアの注意点や利用できる介護サービスを解説

認知症で寝たきりになる?寝たきりが症状に与える影響、ケアの注意点や利用できる介護サービスを解説

認知症が進むと、歩行の不安定さや姿勢保持の難しさが目立ちやすくなり、日常生活の多くを支える必要が生じる方が増えていきます。動きにくさが強まる時期には、転倒や骨折、食事量の低下、嚥下の不調、誤嚥性肺炎などの身体的な変化が重なりやすく、寝たきりの状態へ移行するきっかけにつながることがあります。また、一度寝たきりの状態になると外からの刺激が大きく減り、筋力や体力の衰えが進みやすいため、認知症の症状が揺れやすい状況が続きやすくなります。重度の認知症は、身体の変化と認知機能の変化が同時に進むことが多く、ご本人やご家族にとって負担を感じる場面が増えることも少なくありません。

この記事では、認知症の進行と寝たきりの関係、寝たきりが症状に及ぼす影響、日々のケアで意識したい点、利用できる施設や支援の選択肢を解説します。

林 良典

監修医師:
林 良典(医師)

【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科

認知症の進行と寝たきり

認知症の進行と寝たきり

認知症が進行するにつれて、思考や感情だけでなく身体の動きにも変化があらわれ、日常生活の流れ全体に影響しやすくなります。寝たきりにつながる要因は複数あり、それぞれ整理することで、ご本人の状態を理解しやすくなります。

認知症の進行による症状の変化

認知症が進行すると、記憶の低下や判断の戸惑いに加えて、身体の動きにも変化が目立つようになります。初期では忘れやすさが中心ですが、中等度に近づく頃には歩き始めが不安定になり、方向の把握が難しくなる場面が増えていきます。さらに進むと、座っている姿勢を保ちにくくなり、前に倒れやすい、横に傾きやすいといった姿勢の変化がみられるようになります。

移動の際のふらつきも強くなり、支えがないと安全に歩くことが難しくなることが多く、ご本人が自力で動ける範囲が徐々に限られていきます。また、姿勢を変える動作の速度が遅くなり、わずかな段差や向きを変える動きでも負担が大きくなって、自分の力だけで移動や姿勢を保つことが難しくなる段階へ移行していきます。

認知症で寝たきりになりやすい理由

認知症が進むにつれて、身体の動作を支える指示理解が難しくなったり、バランス感覚が不安定になったりすることで、転倒や骨折につながりやすいです。特に大腿骨近位部の骨折は、安静期間が長く、結果的に寝たきりへ移行しやすいきっかけのひとつです。

また、認知機能の低下によって外出や移動への意欲が下がり、動く機会が減ると筋力の低下が進みます。姿勢を変える頻度が減ることで身体への刺激が弱まり、さらに活動量の低下を招きます。こうした状態が続くと、生活全体が横になって過ごす時間が中心になり、寝たきりに近い状態へ進みやすくなります。加えて、食事量の低下や脱水、感染症などの身体の変化が重なると、全身状態の維持が難しくなり、寝たきりへの移行を後押してしまいます。

認知症による寝たきりの状態と特徴

認知症による寝たきりの状態には、身体の動かしにくさだけでなく、認知症に特有の変化が加わって表れます。認知症の方は、姿勢を自分で整えることが難しく、背中や臀部に負荷がかかりやすいため褥瘡が起こりやすく、関節の動かしにくさや拘縮も進みやすいです。指示動作が難しくなり食事時の姿勢保持が困難になると嚥下の負担が大きくなり、むせ込みやすさや誤嚥性肺炎の危険が高まります。

また、声を出す力や表情の変化が弱くみえることがあり、声がけに対する反応がゆっくりになる時期が続くこともあります。認知症に伴う不安や興奮、昼夜逆転といった行動や心理の変化が強く表れることもあり、寝たきりの状態が続くほど、これらの変化が目立ちやすくなります。外からの刺激が少ないため状況が把握しづらくなり、反応の小ささや表情の乏しさが続きやすく、身体の変化と認知機能の変化が同時に進む点が、認知症の寝たきりにみられやすい特徴です。

認知症で寝たきりになった場合の予後

寝たきりまで進んだ重度の認知症は、体力の低下が進み、少しの体調変化でも全身の状態が大きく崩れやすい段階に入ります。食事量の低下や高い発熱が続く状況では、体力を支える力が急速に弱まり、持ち直すことが難しくなることがあります。重度認知症の方の経過をみると、寝たきりの状態に至った時期からおよそ1年半ほどで亡くなる場合が多く、半年以内に亡くなる方も一定数みられます。特に誤嚥をきっかけとした呼吸器の感染症や、十分に食事をとれない時期が重なると、体力の消耗が早まり、半年以内に死亡するケースが増える傾向があります。

参照:『認知症の人のエンドオブライフケア』(公益財団法人 長寿科学振興財団)

寝たきりが認知機能に与える影響と症状の進行リスク

寝たきりが認知機能に与える影響と症状の進行リスク

寝たきりが続くと、身体機能だけでなく認知機能にも変化が生じやすく、日常の反応や生活リズムに影響が及ぶことがあります。ここでは、寝たきりと認知症の関係を解説します。

寝たきりになった後に認知症になる可能性

寝たきりが続く環境は、身体を動かす機会が減り、周囲から受け取る視覚や聴覚の刺激も少なくなるため、考える力や判断する力が弱まりやすくなります。横になって過ごす時間が長くなると、朝と夜の区別がつきにくくなり、生活のリズムが乱れ、日中の反応がゆっくりしてみえることがあります。高齢の方は、こうした刺激の少なさに影響を受けやすく、理解に時間がかかる、表情が乏しく見えるといった変化が出ることがあります。脳血管疾患の経験がある方や、もともと軽い物忘れがあった方は特に影響を受けやすく、寝たきりの状態が続くことをきっかけに認知症を発症する場合があります。

寝たきりが認知症を進行させるリスク

すでに認知症がある方が寝たきりに移行すると、認知症の症状がより悪化しやすくなる可能性があります。外界との関わりが減ることで、周囲の状況を把握する力が弱まり、反応の遅れや表情の変化の少なさが目立つようになることがあります。身体活動の低下に伴って脳への刺激が減るため、記憶や判断の働きがさらに低下し、日中の活動量に合わせて動いていたリズムが崩れやすくなります。

寝たきりの状態は血流循環にも影響しやすく、脳血流が低下することで認知機能の変動が強まることがあります。さらに、寝たきりに伴う食事量の低下、脱水、感染症などが加わると、身体の負担が増え、認知症の進み方が急激に変わる場合があります。

寝たきりの方が認知症を発症した場合の予後

寝たきりの状態で認知症を発症した場合は、すでに身体の衰えが進んでいるため、認知症のみで発症した方とは異なる経過をとることがあります。認知症は発症から亡くなるまでおよそ10年ほどの経過をたどりますが、寝たきりの状態を背景に発症した場合は、この期間をそのまま当てはめられないことが多いです。

寝たきりの状態では発熱や食事量の低下などの体調変化が起こりやすく、これらが重なると体力の消耗が早く進むため、長期間にわたりゆっくり進行する認知症の経過とは異なり、より短い期間で全身状態が変化することがあります。

高齢期の要介護期間はおよそ1年半とされており、年齢や基礎疾患によって差はありますが、寝たきりの方が認知症を発症した場合の余命はさらに短いと考えられます。

参照:
『認知症の人のエンドオブライフケア』(公益財団法人 長寿科学振興財団)
『平均自立期間の算定方法』(厚生労働科学研究成果データベース)

配信元: Medical DOC

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