●道路交通法70条の「安全運転義務」違反となる可能性もある
事故を起こさなくても、そもそも自作ハンドルカバーの使用が道路交通法違反となる可能性があります。
道路交通法70条は「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定めています(安全運転義務)。
この規定は、運転以前に運転者にハンドルやブレーキなどを「確実に操作」できる状態を保つ義務も含んでいると考えられます。
自作ハンドルカバーが厚すぎたり、滑りやすかったりして、ハンドル操作を妨げる場合、この「確実に操作」できる状態を保つ義務に違反し、安全運転義務違反となる可能性があります。
ハンドルカバーの事案ではありませんが、遠軽簡易裁判所昭和40年(1965年)11月27日判決は、原動機付自転車を運転中にハンドルから左手を離して左官用こてと手板を持ち、ハンドルを確実に操作できない状態で運転した事案について、道路交通法70条違反(安全運転義務違反)を認めました。この判決は、交通が煩雑な路上では、人や車との接触を回避する必要が容易に生じる可能性がある状況であるため、ハンドルを直ちに把握できない状態は違法であると指摘しています(罰金3000円)。
この事案からすれば、緩くてズレてしまう可能性のあるハンドルカバーを装着して、運転操作が妨げられるおそれがある状態で運転することが、安全運転義務違反に問われる可能性はあると考えられます。
もっとも、森簡易裁判所昭和42年(1967年)12月23日判決は、自動二輪車の片手運転で約6kgの出前箱を携行した事案について、一般的に危険だが、具体的状況では「他人に危害を及ぼすおそれ」までは認められないとして無罪としています。
これらの裁判例からすれば、すべての自作ハンドルカバーが直ちに安全運転義務違反になるわけではありませんが、具体的な状況のもとで、一般的にみて事故に結びつく蓋然性の強いといえるほどハンドルカバーの装着が甘かったり、カバー自体の素材が滑りやすいなどの事情が認められる場合には、違反となる可能性があると考えられます。
違反した場合の罰則は、3カ月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金です(道路交通法119条1項14号)。
なお、道路交通法71条6号に基づき、各都道府県の公安委員会規則で「運転操作を妨げるおそれのある履物」の使用を禁止していることがあります。しかし、自作ハンドルカバーは「履物」ではないため、この規定の適用は難しそうです。
また、道路交通法62条(整備不良車両の運転禁止)は、車両の装置が保安基準に適合しない場合を対象としていますが、自作ハンドルカバーは後付けの「装着物」ですので、車両の「装置」そのものの欠陥というよりは運転操作を妨げる状態を作り出したと評価する方が自然だと考えられます。
●まとめ
自作ハンドルカバーは、その装着状態によっては道路交通法違反となる可能性があり、事故を起こした場合には過失運転致死傷罪に問われるリスクもあります。
「可愛いから」「オリジナルだから」という理由だけで安易に使用するのは避けるべきです。もし使用するのであれば、ハンドルにしっかり固定され、滑りにくく、ハンドル操作を妨げないものであるかを慎重に確認する必要があります。
(参考文献) 「執務資料 道路交通法解説 20訂版」(野下文生・道路交通執務研究会/東京法令出版)
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

